日米から不信感を持たれる文在寅政権
韓国の問題というと、日韓の関係悪化を思い浮かべる方も少なくないだろう。実際に、文在寅政権になってからは史上最悪の日韓関係といわれるほど状況が悪化している。
しかし、韓国が外交問題を抱えているのは、日本だけではない。4月に行われた米国のトランプ大統領との会談はわずか2分程度で終了したと報道されている。この背景には韓国が北朝鮮への制裁緩和を要求したこと、北朝鮮への配慮からアメリカとの合同軍事演習の中止を進めたからとされている。
また、8月5日には、文在寅大統領は北朝鮮との南北経済協力で日本に対抗する趣旨の発言を行っており、米国からの不信感は一層増すことだろう。
9年ぶりの食糧援助は北朝鮮から拒絶
韓国は北朝鮮との経済協力について言及しているが、関係が良好とは言い難い状況だ。韓国は、6月、2010年以来、9年ぶりとなる北朝鮮へ5万トンの食糧支援を行う計画を国連世界食糧計画(WFP)と進めていたが、7月末、北朝鮮から断られた。さらに8月5には、中止を進めていたとされる米韓軍事演習も実施しており、北朝鮮は反発している。
南北経済協力事業を行うにしても、象徴といわれる開城工業団地は経済制裁の対象となっており、韓国が独自に経済協力を進めれば制裁違反になる。北朝鮮のミサイル発射も続いており、経済制裁が解除される見込みがないため、実現はかなり先になるだろう。
韓国はWTO上発展途上国として優遇措置を受けている
韓国は、WTO(世界貿易機関)から発展途上国として優遇措置を受けているため、特別に高い輸入関税が認められている状況だ。こうした状況に対して、米国のトランプ大統領が韓国の途上国特別待遇に異を唱えており、WTOが止めない場合、関税を引き下げさせると発言している。
韓国の国内の経済状態も決して良好とはいえない。通貨であるウォンは日本による輸出規制やホワイト国からの除外、中国と米国の貿易摩擦などにより安値が続いている。加えて、株式も急落しているほか、最大の輸出品目である半導体の輸出も不振だ。
企業の業績も低迷しており、韓国の海運最大手である「韓進海運」が倒産し、「サムスン電子」も1月から3月期の営業利益が60%減少するなど、厳しい状況が続いている。
文政権の経済政策を保守系新聞が糾弾
現在、韓国の若年層の失業率は、史上最高値となっており、今後、景気が悪化すればますます失業率は増加するだろう。こうした状況の中、『朝鮮日報』などは文在寅政権の経済政策を批判、非難する内容の社説を掲載しており、韓国国民からの不信感が高まっている。
国内外に多くの課題を抱えている韓国の状況は予断を許さない厳しい状況だ。文在寅政権は、これら1つひとつの課題の解決に向けて真摯に取り組んでいくことが求められる。
千歳 悠
4年ほど活動しているフリーライター。金融、IT、国際情勢など日々情報を追いかけている。趣味は読書と動画視聴。