あのジム・ロジャーズが勧める北朝鮮への投資
シンガポール在住の「投資の神さま」と呼ばれるジム・ロジャーズ氏が北朝鮮が投資先として魅力があり、北朝鮮が市場開放されると急成長する可能性が高いという発言を近年繰り返している(「投資の神様」ジム・ロジャーズが北朝鮮に投資したいと断言する理由)。
北朝鮮への投資は日本企業や日本人には、まだまだハードル高い話ではあるが、2010年以降、中国朝鮮族が北朝鮮へ投資する実業家が少なくない。完成間近とされる元山リゾートエリアへも多くの朝鮮族が投資しているという。
朝鮮族は中国で平均所得が一番高い少数民族
朝鮮族は、中国の55の少数民族の1つされ戸籍上は200万人ほどとなっているが、韓国を中心に日本など海外へおよそ半数の100万人ほどが移住して国外流出していると言われる。
彼らは、母語である朝鮮語と公用語である中国語をネイティブに操り、外国語としての日本語教育が盛んだったこともあり3、4世でも日本語が流暢な人も多いため韓国や日本とのビジネスで優位性が高く、韓国貿易や日本との仕事で成功した人が多い。その結果、中国の少数民族の中でもっとも平均所得が高くなっている。
中国の朝鮮族とは、今から100年ほど前に現在の北朝鮮地域から移住した人が大半であり、朝鮮戦争のときに帰国を促されて帰国した人たちや朝鮮戦争後も1970年代までは、中朝国境を自由に往来できていたため朝鮮族2世の世代で北朝鮮へ移住した人も少なくなかったようだ。
今では信じられないが、当時は、中国よりも北朝鮮のほうが豊かっだことも影響している。その後、中国政府の政策により朝鮮族は、中国国籍を取得させて中国人として1少数民族へ編入し、80年代には国境管理も厳格化して中朝往来も規制されていく。
そんな歴史的な経緯もあり、現在の朝鮮族には、叔父叔母や従兄弟など身近な親戚が今も北朝鮮に住んでいる人が多く、このあたりが日本の在日朝鮮、韓国人とは異なる点となる。
そのため、現代の朝鮮族は中国人というアイデンティティを持ちつつ、朝鮮半島、とりわけ北朝鮮には特別な感情を持っている人が多いようだ。
北朝鮮で得られた利益が国外へ持ち出せない
2010年以降、事業で成功した朝鮮族へ北朝鮮から投資を呼びかけ工場やホテルへの投資を募るケースが増えている。これまで日本の在日朝鮮人が担っていたような役割を今は朝鮮族もやっているということだ。
昨年夏から工場へ投資して成功しているというある朝鮮族の話を紹介する。
「私の知人で韓国との貿易事業で成功した50代男性の姜さんが、昨年8月、朝鮮のある工場から投資を呼びかけられて投資したそうです。平壌郊外にあるビスケットのような菓子を生産する工場への投資で、80万元(約1270万円)くらい投資して利益を上げているようです」(瀋陽の朝鮮族経営者)
ただし、大きな問題があり、これが多くの朝鮮族が投資を躊躇する足かせになっていると前出の経営者は話す。
「得られた利益を中国など国外へ持ち出すことができず、結局、設備拡張など再投資へ回さざる得ず、そのまま失敗して投資額が全額パーになるケースも多々あるため投資話に乗らない人が私の周りでは増えています」(前出の朝鮮族)
同様の話は、他の朝鮮族起業家からも聞いたことがある。出した利益を持ち出そうとしたら、持ち出せないと頑なに断れて、持ち出すなら契約自体を破棄すると言われて、しぶしぶ再投資したという。
しかし、ビスケット工場へ投資してうまくいっているという姜氏は、貿易業も営んでいるので、得られた利益の朝鮮ウォンで仕入れをして中国へ輸出して実質持ち出しに成功しているそうだ。
国連制裁が厳しくなっている今のご時世に北朝鮮のどのような製品、産物を輸出して交易をしているのかこれ以上の詳細は不明だが、朝鮮族の商売人は実にたくましい。
参考サイト
朝鮮族ネット
平壌の新食品工場を公開 北朝鮮、今年2月から操業開始