北朝鮮が安倍首相の呼びかけに反発
北朝鮮が安倍首相の呼びかけに反発
北朝鮮の朝鮮アジア太平洋平和委員会(対外窓口機関)の報道官は6月2日、前提条件なしで金正恩党委員長との会談を目指す安倍首相に対し、「我が国に天下の悪事を働いておきながら、面の皮がクマの足の裏のように厚い」と独特の比喩を用いて批判した。
報道官は、「安倍(首相)はまるで、日本政府の対朝鮮交渉方針が変更されたかのように宣伝し、しつこく平壌の門を叩いているが、我が国への敵視政策は何も変わっていない」と非難している。その上で、「(日本が)醜い本音を捨てない限り、いくら関係改善を声高に叫んでも口元が痛くなるだけである」として、日本政府の提案を拒否する意向を示している。
さらに、報道官は、河野外相が5月25日に「(北朝鮮が)正しい決断をすれば制裁が解かれる」と発言したことにも言及した。「正しい決断とは、我々が日本に言うべき言葉」、「過去の罪悪をきれいに清算して新しい歴史を記す決断を下す時」と批判し、改めて日本に植民地支配に対する過去清算を強く求めている。
北朝鮮は日朝首脳会談に応じるか?
安倍首相が5月6日に「前提条件を付けずに日朝首脳会談の早期実現を目指す」という方針を発表して以降、北朝鮮が公式に反応するのはこれが初めてである。
北朝鮮は、日朝首脳会談自体を必ずしも否定していないものの、日本が対北方針を変えない限り対話には応じないことを示している。日本政府が無条件会談を提案しているにもかかわらず、米国主導の圧力路線に追従するなど敵視政策を続けていることなどを矛盾点として非難している。
北朝鮮側には、仮に首脳会談に応じても結局日本は制裁解除に応じず拉致問題解決を訴えるのではないかという警戒心もあるとみられる。北朝鮮にしてみれば、米朝交渉に注力する中で、袋小路に陥るかもしれない日本との交渉など二の次ということだろう。
また、北朝鮮は今回改めて、日本に過去清算を求める考えを強調している。今年の北朝鮮側の論調を見る限り、日本が北朝鮮と交渉する際には過去清算が大きな柱となりそうだ。
菅官房長官は6月3日、「(日本政府の方針は)まったく変わらない」と改めて日朝首脳会談を目指す考えを強調したが、この点をクリアしないと日朝首脳会談までの道のりは長そうである。現状のままだと北朝鮮が早期に日本との首脳会談に応じる可能性は低い。
八島有佑