北朝鮮料理は辛くない
現代韓国料理と言えば辛い、赤いというイメージを持っている人は多いのではないだろうか。実は韓国料理が辛くなったのは比較的最近で、元々の朝鮮料理は辛くなかったと言うと信じられるだろうか。
北朝鮮料理は韓国料理と比べると辛くない。最近の北朝鮮レストランは韓国人客を意識してか味が韓国へ寄っていっている印象もあるが、昨年の南北会談で金正恩党委員長が韓国側へ持ち込み話題となった「玉流館」を代表とする平壌冷麺も辛くないあっさり味だ。平壌冷麺は、好みで酢とからしを入れるのが平壌流なので、スープはさらにさっぱりし、からしなので辛さの質も違う。
辛い=韓国らしい
一方、韓国で一般的な冷麺を食べると、白い麺は最初から真っ赤だ。ここにさらにコチュジャンやキムチをこれでもかと投入するので麺の味もスープの味もよく分からなくなるほど辛くなる。
そのため辛いのが苦手なので韓国料理はちょっと…と躊躇している人は北朝鮮料を食べてみると新しい発見があるのではないだろうか。
もちろん、韓国でも辛くない料理は存在する。コチュジャンなどを追加で入れなければそこそこの辛さなのであるが、「辛ければ辛いほど韓国らしい」、「辛くなければ韓国料理ではない」という風潮が現代韓国では定着している。これはいつからの話なのかをご紹介したい。
辛くなったのは南北分断後そして90年代にさらに加速
在日韓国、朝鮮人や韓国人の知り合いに聞いても昔から辛かったという人もいるが、少し年配の人へ聞くと、1960年代から辛くなり始め、韓国の民主化と並行するように1990年代からさらに辛さに拍車がかかったという話を聞くことができた。それを元に調べていくと、現代韓国料理が辛くなったのは南北分断後で歴史にすると50年ほどしかないことが明らかになってくる。
ある韓国料理を紹介する記事によると、1953年に辛いトッポッキが初登場し、1963年に今の「辛ラーメン」につながるような辛い即席麺が登場したそうだ。
そこへ朝鮮戦争休戦の緊迫感や徹底した反共教育など韓国のナショナリズム高揚が辛いもの=韓国らしさ=韓国という図式となりあらゆるものが辛くなっていき、70年前までほぼ同じだった料理の味が北朝鮮とは大きく異なる韓国独自の変化を遂げ、現在、私たちがイメージする韓国料理となっていく。
やはり韓国独自の食文化?
やはり韓国独自の食文化?
韓国人は韓国料理が世界一辛くて美味しいと口にするが、食べるを発汗するような辛い料理は他にもたくさん存在する。地政学的に見て、唐辛子の果皮の成分であるカプサイシン系の辛い料理を好むのは、赤道に近い低緯度の国や地域で暑い国が多く、高緯度の寒い国や地域は、塩分や油分を多く含む塩辛い料理を好む傾向にある。
世界的に見ると、韓国と同緯度の国や地域で辛い料理が多い国は珍しく、その意味では韓国人たちが言うように「韓国独自の食文化」と言えるのかもしれない。
(続く)
参考サイト
韓国料理はいつから辛くなったの?