漁民風商人が100元の北朝鮮グッズを水上で売る
「売っているものは北朝鮮製のタバコや切手シート、小物を入れるようなポーチや湯呑などがセットなったものなどで、もちろん人民元で取引されていました。このときは中国人が興味津々に買っていました。小さな座布団サイズにまとめられた小物セットは100元でした。商売が終わると、再び船を切り離し、漁民風商人はどこかへ消えていきました」(日本人観光客)
この「水上マーケット」は利用者にはよく知られる話なのだが、鴨緑江の中洲の9割は北朝鮮領とされているので、中洲と中洲の間を滑走するとまるで北朝鮮領土にいるような体験ができる。
Yalu River boat ride Dandong – North Korea
また、タイミングによっては、北朝鮮領土の中洲へ接岸することもあった。接岸して中洲に“駐在する”北朝鮮人(痩せこけて力なく座っている農作業風の服装をしている男性が多い)とたわいのない話をしながら飲み物などの差し入れをしたりする光景が中国人観光客をも興奮させていた。
密輸に使われていた観光用モーターボート
今回、モーターボート営業を中止させた理由として、丹東市旅遊局は公には発表していないが、丹東の旅行会社向けの説明として、「密貿易防止のため」と説明している。
水上マーケットでのやり取りや中洲に接岸するくらいでは密貿易と呼べるほどの取引はできないが、さらに中洲ではなく対岸へ接岸して乗客を乗せた状態で堂々と北朝鮮側から物資をボートへ積み込む光景に出くわした日本人観光客もいた。
「8人を乗せたモーターボートがそのまま対岸へすっと近づいていきゴチンと接岸しました。目の前には監視棟からライフル銃を肩に下げる若い女性兵が厳しい目つきで見下ろしています。これだけでも冷や汗ものですが、船頭が何やら中国語と朝鮮語で『かわいい』、『美しい』と連呼していると女性兵は一瞬笑みを浮かべてすっと後ろへ消えました。すると、北朝鮮側から2人の若い男性がねずみ色の大きな麻袋のようなものを引きずって我々のボートへ向かってきて、その袋をそのまま船頭へ渡しました。船頭はすばやくボート先頭の見えない場所へ収納し、荷物を受け取ってわずか数秒でボードを動かし離岸していきました。
他の中国人客が『それは何か?』と船頭に尋ねると、『ロシア製のタバコだ』と答えていました。『日本人がいる(私たちのこと)が大丈夫なのか?』とも聞いていましたが、私たちを見て、『大丈夫だ』と笑っていました。観光用のモーターボートは密輸にも白昼堂々と使われていたようです」(大連在住の日本人男性)
今でも夜間には密貿易が盛んに行われている
前出の男性によると荷物を受け取った後に代金の支払いは確認できなかったそうだ。後払いなのか、すでに支払い済みだったのか不明だが、当然ながらこんなモーターボートを使って製品や物資、金銭のやり取りをすれば、正規の中朝貿易統計には一切載らない密貿易となる。
「現在でも真っ暗になる夜間にはボートを使った密貿易が盛んに行われていますよ」(丹東の旅行会社担当者)
なお、丹東市公営である遊覧船は変わりなく通常営業されているので乗船することができる。
この船マークの並びに2、3か所モーターボート乗り場があった