2003年軍人を無断撮影したとホテル軟禁
2003年軍人を無断撮影したとホテル軟禁
今年8月、北朝鮮で日本人が拘束されたことで注目されたが、彼のように数週間拘束された事例ではないものの短期拘束された事例は過去にも起きている。2003年に1日半ホテルで軟禁状態に置かれたというテレビ局男性スタッフIさんは、
「2003年11月に取材で北京総局のカメラマンと私の2人で訪朝して、高麗ホテルに宿泊していました。北朝鮮側が指定する場所しか取材できず大した面白い映像も撮れずに取材日程も終わりに近づいていた3日目、午後5時過ぎに高麗ホテル1階ロビーでカメラマンがカメラを持ってホテル内から入口側を撮影していたところ通りを3人の軍人が通りかかり、いきなりホテルへ押しかけてきてきました。彼らはホテル内から俺たち軍人を撮影したと強い口調で言い寄ってきました」
Iさんとカメラマンは、カメラ映像を見せるように言われたので、カメラごと軍人へ渡した。
「11月の午後5時はすでに夕暮れで薄暗く明るいホテル内から外の通りを撮影しても被写体は映らないんですよ。事実、撮影した映像にはホテルの灯りがガラスに反射して外はまったく映っていませんでした」
軍人はビデオテープを預かって確認すると、確認が済むまではホテルから一歩も出ないようにと案内人へ伝えた。ホテル内軟禁だった。
再生できなかったソニーのHDCAMテープ
翌日朝、軍人がホテルへやってきて映像が再生できないからカメラで見せろと言ってきた。
持ち込んだビデオカメラは「ソニー」の業務用のカメラで、録画したテープは、当時テレビ局ではよく使われていたHDCAMテープ。「北朝鮮には探しても再生機がなかったんでしょう」とIさん。
カメラ付属の4インチくらいの液晶画面で見ても通りは映っておらず、拡大しても人影すら確認できない。Iさんらはこれで開放されると思っていたら、
罰金1万ドル請求
罰金1万ドル請求
「罰金1万ドルを支払う必要がある」
(当時のレート約109万円)
と軍人は信じらないことを言ってきた。なぜだと聞き返すも、それが我が国の規則だを繰り返すのみで埒が明かない。
軍人らはIさんたちが明日出国予定であることを知っていた。ニヤニヤ笑うように支払いを迫ってきた。
濡れ衣であり不当な要求なのでIさんは拒否した。すると、よく考えるようにと言い残し軍人らは立ち去った。引き続きホテルから出ることが許されない状態が続いた。
翌日、いよいよ帰国日。出発は午前10時台の北京便。このまま帰国できないのではないかとIさんは焦りを覚え始めていたら午前7時過ぎに例の軍人らがやってきて、どうだと聞いてきた。
違反を示す書類もなく1000ドルへ減額
どうだも何も払う気はないと再び伝えると、「では1000ドルにしてやろう」と突然10分の1へ下げてきた。それでも納得できなかったが、出国時間が迫っていたので言われるがまま1000ドルを支払いそのまま出国することができたという。
「罰金を示す書類もないし名前も書いていない。そもそもその軍人たちへ所属や名前を聞いても最後まで教えなかったのでおかしいと思っていました。帰国後に同業者へ聞くと同じ目にあった人がいて、どうやら小遣い稼ぎのゆすり、たかりの『副業』だったようです。彼らが本物の軍人だったのかも今となっては分かりません」
現在、マスコミの取材訪朝でもこのような話は聞かないので、取り締まられたのか副業はなくなったようだ。