インターネットの位置づけが近い北朝鮮と中国
北朝鮮は普及が進むスマートフォンに合わせて国内向けのインタネットサービスも増えてきている。ゲームやメッセンジャー、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)なども今後、次々に誕生していくと思われる。
これらは北朝鮮人の重要な娯楽であり、北朝鮮政府にとっては重要なガス抜き手段と位置づけていると見られる。この点は中国政府が認識するインターネットの位置づけに近い。
今年に入り、北朝鮮から中国への視察が増えており、その中にはソフトウェア開発会社への訪問も増えている。前回、中国の国民的アプリ「WeChat(微信)」を研究し、北朝鮮版WeChat開発を目指しているのではと紹介したが、その理由について説明したい。
WeChatは、日本の「LINE」をイメージすれば近い。基本は連絡を取り合うメッセンジャー機能がベースで、コール機能やグループコミュニティ機能、WeChatマネーをチャージしておけばコンビニエンスストア等で電子決算もできる機能も備えている。
7億5300万人(2018年2月1日『人民日報日本語版』)を超える中国のスマホユーザーのうち実に7億人がインストールしているのでほぼ全スマホユーザーが利用する国民的アプリだ。
LINEに近いようで使い方が異なるWeChat
WeChat(中国人)とLINE(日本人)の主な利用方法は少し違っている。LINEは相手へ連絡する手段としては、メッセージ機能とコール機能を使うが、WeChatは、メッセージ機能はあまり使わず、ボイスメッセージを互いに吹き込んでやり取りするボイスメッセージ機能とコール機能を多用する。
LINEにもボイスメッセージ機能は存在するがあまり使われてない。そのため、WeChatはトランシーバーのように一方的に話して、その後その返答を確認するようなコミュニケーションに使われている。今、中国のバスや電車では、スマホをマイクのように持って語りかける光景が日常茶飯事となっている。
North Korean Smartphone
現地ガイドが英語で北朝鮮製のスマホを説明する3年前の動画(2分41秒・英語字幕付き)
北朝鮮政府にとってコミュニケーションアプリは諸刃の剣
この種のコミュニケーションアプリが誕生すれば、便利なアプリなので北朝鮮人にはいい娯楽になるだろうが、同時に、北朝鮮政府の統治を揺るがすような密談や反政府的な活動に利用される恐れもあるので北朝鮮政府にとっては諸刃の剣とも言える。
その点、WeChatは、北朝鮮人に上手にガス抜きさせながら徹底的に監視もできるのでまさに最適な集中管理方式システムで、中国政府は、WeChatを国家プロジェクト的に快適に進化させ生活必須アプリに育てつつ中国人を監視するために利用しているとされ「最強の人民監視ソフト」とも言われているからだ。
その3へ続く。