北朝鮮高官による大連視察が金正恩委員長の大連訪問後に増加
5月上旬に北朝鮮の金正恩委員長が2度目の訪朝をしたのが大連だった。2018年は半年足らずで中国を3回訪れた金委員長であるが1回目と3回目は北京、2回目は大連だった。なぜ大連だったのだろうか。
大連は、遼東半島の先端で日露戦争後、日本が終戦まで委任統治していた都市だ。よく満州国と間違えられるが大連は満州国ではなく正確には関東州大連と呼ばれ、台湾、朝鮮半島同様に外地とされており当時の地図を見ると日本列島と同じ色で塗られていた日本領土と扱われていた場所だった。
大連は、人口約610万人。これだけ見ると多いと思うが、中国は人口も多いが面積も広い。大連の面積は東京23区の21倍強の広大な面積となる。人口610万人を誇る大連であるが中国国内の都市人口ランキングでは25位前後と日本だと姫路市(約53万人)くらいに相当する中規模都市として扱われている。
そんな大連は金日成主席、金正日総書記も訪れており、今回の金正恩委員長の訪問で3代続けて大連を訪れたことになる。しかも金委員長訪問後、北朝鮮の高官クラスが度々大連の視察に訪れているという。どうやら金委員長が大連を平壌のロールモデルとの指示を受けて視察を繰り返しているようだ。
上海は遠すぎるが大連と平壌は環境が近い
大連は戦前には満州国の玄関口として満鉄(南満州鉄道株式会社)の本社が置かれるなど発展を遂げた。戦後は、戦前の遺産を生かして建国直後の中華人民共和国の発展を支えた。80年代になると日本とのゆかりや地理的な利点から日本企業の誘致へ力を入れ始め改革開放政策が本格化した90年代半ばの薄熙来市長時代には都市緑化率中国1、工場の排ガス規制も当時中国でもっとも厳しいものを実施するなど都市化と環境のバランスをとった市政で中国全土の理想都市として注目された。
しかし、そんな栄華は長くは続かず、薄熙来氏の失脚により大連は逆風にさらされ経済はここ数年低迷して喘いでいる。北朝鮮はそんな大連の何を参考にしているのだろうか。
考えられることは、大連はコンパクトシティで大連の市区と呼ばれる中心部と平壌直轄市がほぼ同じ面積(約2500平方キロメートル)で環境が近いこと。また緯度もほぼ同じで気候が近く、両都市は直線距離約360キロメートルと往来も楽だ。
北朝鮮は、大連が中国の都市では創成期に日本企業を中心とした外資企業の誘致に成功した歴史や経験を学ぼうといているという。現状の平壌だと今の上海や深センだと規模が違いすぎてロールモデルにするには遠すぎて霞んでピンとこないこともありそうだ。
ソフトウェア会社や通信事業者への視察も
さらに関係筋の話では、参考にしているのは都市モデルや経済だけではないという。どうやら北朝鮮は、中国型のインターネット管理システム導入を検討しているようで大連のソフトウェア開発会社や通信事業者への視察も重ねている。
中国といえば、世界でも最強とされる集中管理方式を敷いておりネット規制は年々強化されている。中国国内サイトは高速だが、国外サイトには高い負荷をかけて極端に遅く接続自体がまったくできないか、つながりづらい状態ができあがっている。これについてはまた別途お伝えする。