36人死亡のバス事故で金正恩委員長が異例の中国大使館や病院訪問を中国が報じる
22日夕方、北朝鮮南部の黄海北道の高速道路で中国人観光客を乗せたバスが事故を起こし中国人乗客32人と北朝鮮人の現地ガイド4人の合計36人が死亡。2人が重傷となる事故が発生した。
『中国中央テレビ(CCTV)』によると、事故は観光地である古都開城から平壌への帰路で発生、事故映像では大破したバスが確認できる。
24日の中国の官製メディア『環球時報』電子版は、事故翌朝の23日早朝に金正恩委員長が平壌の中国大使館へ出向き李進軍大使を通じて、習近平主席や遺族に対して哀悼の意を伝え、その足で、重傷者2人が治療を受けている病院を慰問し病院関係者へ全力で治療するように指示したと報じた。
さらに24日の中国の官製メディア『人民日報』は、習近平主席の指示で医療部隊を北朝鮮へ派遣したと伝えている。
参考サイト 朝鲜最高领导人金正恩就中国游客重大伤亡事故向中方表示慰问『環球時報』
中国のツアー旅行会社は北京の中唐。北側は日本人担当のKITCではない新興旅行会社
今回の事故は、北朝鮮で外国人が死傷した事故では近年にない大事故だと言える。人数もさることながら3月末の中朝首脳会談で中朝関係改善の兆しで盛り上がる中国だったのでより早く公開せざるを得なかった背景もありそうだ。
中国メディアでは伝えられていないが、今回の北朝鮮ツアーを企画手配したのは、「中唐国際旅行社」(北京)だ。北京の日本大使館のサイトに訪日ビザ手配会社としてリストアップもされている旅行会社なので日本へのツアーも手配している中堅以上の旅行会社と考えられる。
そして、北朝鮮側の旅行会社であるが、すべての日本人を担当する「朝鮮国際旅行社(KITC)」ではなく、最近、異業種から旅行業へ進出しほぼ中国人を専門として扱う新興の旅行会社とのことだ。
事故を起こしたバスは中国製のバスか?を中国政府が迅速にSNSから削除
事故を起こしたバスは中国製のバスか?を中国政府が迅速にSNSから削除
事故の一報が伝えられた直後、中国の国民的チャットアプリ「WeChat」などでは、あることが書かれていた。
1つは、38人中36人死亡という死亡率の高さからバスが雨でスリップして橋から転落、大破した事故の詳細な状況について。そして、もう1つは、事故を起こしたバスのメーカーについてだ。
映像に一瞬映り込むバスの「…ONG」のブランド名から中国最大のバスメーカー「金龍客車」であることが分かり、中国のネット民は、「金龍のバスが事故を起こした!」との書き込みが走った。対外的には、「どうして中国のバスが北朝鮮に?」という批判と疑念も中国政府へ向けられる可能性を懸念したのか、それらの書き込みは一掃され、現在は見ることができない。
日本と違い中国ではバス事故は日常茶飯事だ。そのためバス事故自体は珍しくなく話題にもならない。しかし、北朝鮮で中国人が中国のバスで事故となると話題になるようだ。
中国政府は、政府批判や北朝鮮へのネガティブな情報を遮断したい狙いがあるのか、それらの情報を削除し、両指導者が迅速かつ異例とも言える指示で懸命に対処していることをアピールしているようだ。
参考サイト 金龍客車(中国語・英語)