日本海を“東海”に変えろと要求
韓国が執拗に変更を求める日本海呼称問題。世界中にありふれた方角に由来する呼称にしろと要求する。
しかも、その歴史は2000年もあると荒唐無稽な主張をしていることは、別記事でも紹介した。
実は、その裏には不法占拠が続く竹島問題が隠れていることを2回に分けてお伝えする。
2月20日、北朝鮮が「火星15」を発射のあとに行われた日米韓ミサイル防衛訓練について、米インド太平洋軍司令部が訓練を「日本海で(in the Sea of Japan)」で実施したと発表したのに対し、韓国は“東海”(East Sea・トンヘ)に変えるよう強硬に抗議している。
去年10月、米空母ロナルド・レーガンを中心に行われた日米韓海上共同訓練でも、インド太平洋軍司令部は「日本海」で実施したと広報したが、韓国のゴリ押しによって日本海を「日本と韓国の間の海域(Waters between Japan and Korea)」というわけのわからない言葉に変えられたことがあった。
しかし、今回は3月1日現在、広報文は変更されておらず、米側は、韓国の無理筋の要求を突っぱねているようだ。
海図での「“東海”併記」を狙ったが完敗
韓国が、日本海は“東海”だと主張し始めたのは、南北同時国連加盟を果たした翌年の1992年からのことで、その歴史はわずか30年に過ぎない。
しかも東海を国際的に認めてもらうための主戦場としたのが国際水路機関(IHO)だった。
IHOは、世界の海図の標準となる「海洋と海の境界」を発行していて、海図の表記さえ変更されれば、“東海”は世界的に認知されるとでも考えたようだ。
ただ、いきなり“東海”の単独表記を主張するのは無理だとわかっていたので、日本海との併記を主張した。
しかし、IHOを舞台にした“東海”論争は、2020年11月のモナコでの総会で新しくデジタルデータ版のガイドライン「多角化された世界の海域の区分け」(S-130)を導入することで合意したことによって終止符が打たれ、韓国側の完全な敗北に終わった。
新しいガイドラインは、全地球測位システム(GPS)の活用などデジタル時代に対応して、海域を名称ではなく番号のみで表記し、位置情報のほか、様々な航海情報も提供できるようになった。
合わせて、従来の「海洋と海の境界」(S-23)については、既存のIHO出版物の一部として引き続き公開し、利用できるとされた。
つまり、新しい海域の名称は番号のみで表示されるため、“東海”表記を求めた韓国の言い分は聞き届けられることはなく、反対に、従来の日本海の名称は引き続き公式に残ることになったのである。
小須田 秀幸(こすだ ひでゆき)
NHK香港支局長として1989~91年、1999~2003年駐在。訳書に許家屯『香港回収工作 上』、『香港回収工作 下』、パーシー・クラドック『中国との格闘―あるイギリス外交官の回想』(いずれも筑摩書房)。2019年から2022年8月までKBSワールドラジオ日本語放送で日本向けニュースの校閲を担当。「ノッポさんの歴史ぶらり旅」をKBS日本語放送のウェブサイトとYouTubeで発表している。