北朝鮮版の安宮牛黄丸に驚く中国人医師
今、中国では密輸された1粒2万円ほどの解熱効果が高いと噂(うわさ)される漢方薬が売買されている。その薬とは北朝鮮版の安宮牛黄丸のことだ。
元は中国産の高級漢方薬として知られる饅頭(まんじゅう)のような形状の漢方薬で、日本へ輸入されている正規品では、1粒2万4800円で販売されているサイトも確認できる。
この安宮牛黄丸が北朝鮮で正式に製造販売されていることを確認できたのは、昨年5月、北朝鮮で大量の発熱者が発生し、初めて新型コロナウイルスへの感染者を認めた時だ。
中国人駐在員が多い北朝鮮東北の羅先特別市で行われていた治療で使われていて、平壌でも同様だとする北朝鮮の治療法リストが中国へ伝わり発覚した。
中国人医師も驚いたとのコメントが確認できるので、安宮牛黄丸が北朝鮮でも正式に販売されていたことは知らなかったと思われる。
成分や効果の違いは不明だが…
さて、この北朝鮮版の安宮牛黄丸を密輸してまでも買いたい理由は、「解熱効果が高い」といううわさが広まったからだ。
具体的にどの成分が異なり、効用に差があるのかを確認しても現物がなく成分表もないのでわからないという。
現在、中国の主要都市では、新型コロナの爆速感染は一段落している。
そのため、12月末や1月上旬のような極端な解熱剤や風邪薬などの医薬品不足は解消している。
しかし、今後の新たな変異株による第2波などに備えて医薬品を備蓄しておきたいという動きは根強いようだ。
北朝鮮版の安宮牛黄丸は、密輸品なので中国のECサイト淘宝網(タオバオ)でも表面的には確認できない。
遼寧省瀋陽の中国朝鮮族によると、北朝鮮産の安宮牛黄丸は、1粒あたり700元から1000元(約1万3000円~1万9000円)くらいで取引されているという。
一般的な日本人の感覚だと、成分も効果もよくわからない密輸品を服用しないと思うのだが、中国人は、信用できる人(親戚、友人、大学教授や中国共産党員など社会的地位が高いとされる人など)からの口コミ情報をうのみにする人は少なくない。
または、もともと中国国内で信頼性が高いブランド薬ということも影響していると思われる。
1粒1900円くらいから天然入りだと2万円超まで
安宮牛黄丸は、成分や製造元により色々なバージョンが存在し、価格はバラバラだ。
安いものは100元(約1900円)くらいからあるが、特に有名な北京同仁堂の安宮牛黄丸は、1粒で1088元(約2万1000円)なども販売されている。
箱の用法・用量には、大人1日1粒とある。即効性に乏しい漢方薬ということを考えると、最低でも4、5日は続けて服用する必要がありそうだ。
ちなみに牛黄とは、牛の胆のうや胆管にできた結石のことだ。牛には胃が4つあるため、結石ができることは非常に珍しく貴重なものらしい。
現在では、牛黄を人工的に作ることができるようになったが、希少な天然の牛黄が重宝されており、それが安宮牛黄丸の価格差になっているようだ。