海外渡航が原則許可制の中国
中国政府は2月6日から中国人向けの団体旅行を20か国限定で解禁すると発表した。
20か国には日本や韓国、米国は含まれていない。日韓は先日の水際対策強化への“対抗処置”と称するビザ発給停止を理由にしていると思われる。
中国は、海外旅行も内政手段の1つとして利用されている。海外渡航は原則許可制で、申請窓口となる各旅行会社へ許可人数を割り当てている。
中国政府が政治利用したいという情勢が発生した時には、この許可人数を減らしたり、停止すれば元栓を締めることができるわけだ。
中国政府は、中国人の海外旅行を自由化したように内外へ喧伝しているが、事実上、このようにして海外旅行を管理している。
日本人にもこの喧伝をうのみにしている人は少なくない。
「中国共産党にとって好ましい渡航先」ホワイト国
今回、発表された20か国を見てみよう。
タイ、インドネシア、カンボジア、モルディブ、スリランカ、フィリピン、マレーシア、シンガポール、ラオス、アラブ首長国連邦(UAE)、エジプト、ケニア、南アフリカ、ロシア、スイス、ハンガリー、ニュージーランド、フィジー、キューバ、アルゼンチン。
これら20か国は「中国共産党にとって好ましい渡航先」、つまり、ホワイトリスト国と言える。
中国共産党が長年コツコツと刷り込んできた中国共産党史観が崩れるのが最も困るので、自由主義国の中でも西側先進国である日本や米国、韓国にも行かせたくないのだろう。
中国政府は何かしらの理由をつけて「海外渡航自体を禁じたい」が本音だろう。
この理由にするために、考えすぎかもしれないが、新型コロナウイルスが爆速感染する中での中国人渡航再開だったのかもしれない。
中国政府は検査を放棄してウイルス情報も公開しないことで、周辺国へ不安を与え、特に西側の民主主義国であれば、国内世論の反発で渡航規制をしてくるだろうと見越してだったのであれば、大した策士だ。
北朝鮮も近日中にホワイト国へ追加か?
もっともこのホワイト国は団体旅行のみなので、個人ビザを取得すれば、日本も米国でも行くことはできる。
しかし、ビザ申請には、中国政府の意向で年収制限を設けているので、これによりかなり中国人渡航者を減らすことに成功している。
ホワイト国にニュージランドが入っているのがやや意外であるが、近年、中国人の移住先として人気があることも関係しているのかもしれない。
欧州ではスイス1か国しか確認できない。
今後、このホワイトリストに北朝鮮、パキンスタン、モンゴルなどが入ることが予想される。
「今さら後悔しても遅い」って…
さて、どの中国の官製メディアを見てもホワイト国20の一番最初がタイになっているようだ。
タイは、中国人が過去最高に海外へ出かけた2019年には国別1位の約1100万人(過去最多)だったので、中国政府はタイ推しなのだと思われる。
中国SNS微博(ウェイボー)やWeChat(ウィーチャット・微信)で、中国語の旅行に当たる「旅遊」というかなり大きな概念の言葉で検索すると、タイ旅行の話題が多く上位表示される。
中国政府による官製インフルエンサーを使った何かしらの世論誘導を感じさせてくれる状態になっている。
中国の団体旅行解禁を伝える官製メディアの投稿には、「韓国や日本なんか頼まれても行かない」「中国人を差別するから自業自得だ」「今さら後悔しても遅い」というコメントが確認できる。
果たして、多くの一般的な日本人は、この件を悲しんでいるのだろうか。街場の感覚では、その逆なのではと思うのだが…。