マハリノ-琿春貨物輸送350万トンで前年比22%増
ロシア政府系通信社のスプートニク(元モスクワ放送)中国語版は12日、ロシア・マハリノと中国吉林省の琿春を結ぶ鉄道による2022年の貨物量が約350万トンとなり、前年比22%増加したと伝えた。
記事によると、貨物の約80%近くをロシア産の石炭が占める。また、22年のコンテナ輸送量も増加しており、前年比4倍以上となった。
マハリノの国境検問所は、2022年3月28日から年中無休24時間体制へ移行しており、対応できる貨物列車が1日あたり5本増加した。
新体制後は、ロ中国境の通過交通容量は2倍となり、往復で1日あたり最大8本の貨物列車が運行されているという。
琿春とマハリノ間約40キロ・メートルの鉄道は、2013年8月に中国の線路幅(標準軌)とロシアの線路幅(ロシア広軌)の両方に対応するように4本混合線への改良工事を終えて、運行が再開されたものだ。
4本混合線にすることでロシア車両は、台車を交換することなく、そのまま琿春まで乗り入れることができ、運んできた石炭を積み替えて中国国内へ運搬することができるようになった。
ロシア企業の支援で経済関係を強化する吉林省
ロシアによるウクライナ侵略で中ロ関係へ注目が集まっている。
この記事は、中国SNS微博(ウェイボー)へ投稿され、ロシアとの友好を支持するとの当たり障りのないコメントが書き込まれている。ロシアを批判したり、ウクライナ侵攻へ言及するコメントは確認できない。
中国当局が監視を強め、ウクライナを侵略するロシアを全面支持するなど、中国政府が国外から見られたくないコメントへ厳しく目を光らせていると思われる。
また、ウェイボーには、中国共産党の機関紙「中国日報」が、9日に吉林省経済貿易代表団が、琿春口岸(出入国審査場)からロシア極東を訪問したことを投稿している。
目的は、ロシアとの経済交流と貿易促進で、代表団は、石炭、水産物、自動車部品、中ロ越境EC、電子商取引、国際物流などのロシア企業を全面支援することを表明。
習近平政権が掲げる一帯一路構想10周年を迎え、吉林省が主導するロシアとの経済関係をより強固にする重要な1歩となると伝えた。
このウェイボー投稿にも、当たり障りのないコメントしか残されていない。
中国の夢でウラジオストク奪還?
その一方で、吉林省からは、こんな動きも漏れ伝わってくる。
ロシアがウクライナ侵略に敗戦、または、勝利したとしても国力は大幅に低下し、国際信用力も大きく失墜することを見越して、弱体化したロシアから極東を取り返すという動きだ。
吉林省など旧満州、東北3省の人たちは、ウラジオストクなどの極東は元々中国の領土でロシアに奪われたと認識している人が多い。
現在でも、ウラジオストクを旧名の海参崴で呼び続ける人も少なくないという。
ウラジオストクを含む極東地域は、1858年のアイグン条約と1860年の北京条約で清朝から帝政ロシアへ割譲された歴史がある。
割譲された地域は、中国では外満州(外東北)とも呼ばれ、現在のロシア沿海地方、アムール州、ユダヤ自治州、アムール州、ザバイカリエ地方にまたがる広大な土地だった。
吉林省在住の中国人実業家によると、中国は、すでにロシア極東の一部の港湾の使用、運営権を得ているという。今後、この動きが加速するだろうとのこと。
また、ロシア沿海州には、中国朝鮮族と同じルーツを持つ高麗人が多数おり、近年はビジネス交流が盛んになりつつある。朝鮮族をキーとする極東進出も増えている。
習近平政権は、中国の最大領土を取り戻することを“中国の夢”として掲げている。
中国共産党は、表立って謳ってはいないものの、当然、外満州も領土奪還の野望に含まれていると考えるのが自然だろう。