春節に中国人が殺到?
「訪日が禁止されるとうわさが流れたので10日前倒しで東京へ来ました」と話すのは中国広東省の深センから訪日した中国人経営者だ。
日本で物流事業を立ち上げる準備だそうだが、新型コロナウイルスまん延の影響で3年渡航できず計画が遅れているので一気に進めたいと意気込む。
現時点で中国政府は、訪日禁止の通達はしていないが、春節(旧正月)直前に「訪日禁止令を出すのでは?」とのうわさが流れているようだ。
日本のメインストリームメディアを見ると、春節にコロナ禍前のように中国人が殺到すると思わせるような内容で伝えている。
それを歓迎する人、拒否反応を示す人と様々なようである。
これらのニュースを信じて中国人による「爆買い」復活を期待する観光地の声なども聞こえてくるが、現状を取材すると、中国人訪日客は、期待するほど来ないと思われる。
もし、期待して中国人だけにターゲットを絞って準備すると、痛い目に遭うのではないだろうか。
団体旅行禁止とパスポート発給が停止のまま
過去最大は2019年で、年間959万人の中国人が訪日した。1か月平均約90万人となる。
春節連休や桜の季節、夏季、10月1日の国慶節(建国記念日)連休などは多く、それ以外のシーズンは少なく平均すると1か月あたり90万人が訪日したことになる。
今年の春節(1月22日)連休は、多くて19年の5分の1くらいなのではないだろうか。10分の1くらいの可能性もある。
その理由は、現時点でも最も旅行ハードルが低い団体旅行が禁止されたままであること。パスポートの新規発行、更新が停止されたままであることが挙げられる。
それに加えて、昨日発表した日本での中国からの入国者に対する水際対策強化への対抗処置、と称する日本人向けのビザ発給停止により、手配する中国の旅行会社による中国政府への忖度、つまり、訪日を回避する動きが始まっているというのだ。
年収970万円以上じゃないとビザ申請できない上海?
現在、中国人が日本へ行くとしたら個人ビザを取得する必要がある。
在中国日本大使館のサイトをよると、個人ビザは4種類ほどあり、現在は、「十分な経済力を有する者に対する個人観光数次」査証か、「相当な高所得者に対する数次」査証しか、中国政府が申請窓口である中国の旅行会社へ受け付けないように指示している。
十分な経済力とは都市によって異なるようで、上海では、年収50万元(約970万円)以上とテレビ朝日系列の記者がツイートしている。
一方、大連の旅行会社に聞くと、年収10万元(約195万円)くらいから申請できるという。
これが事実であれば、ほとんどの一般の中国人はビザ申請すらできず、中国から出国することができないということになる。
中国政府は、日本や韓国の入国規制強化への報復処置として、日本人や韓国人向けのビザ発給を停止。
中国が報復処置を実施する国に行くのは、政府の意思に反する“非国民”という空気を作り出し、旅行会社へ無言のプレッシャーを与えて、中国人の出国を抑え込む方向へ動いていると考えられる。
まもなく春節(1月22日〜)ですが、ほとんどの中国人の方達は、いまビザが取得できず、日本に観光旅行をすることは出来ません。
在中国の日本大使館がビザ発給を制限しているのではなく、中国当局(国家旅游局)が「代理店」に対してGOサインを出していないことが原因のようです。#上海のいま#解説 pic.twitter.com/Wpda1JEL52
— 高橋大作(ABCテレビ記者@上海支局) (@abc_daisaku) January 10, 2023
悲報か朗報か訪日中国人少
日本ではあまり知られていないが、中国では、先月7日のゼロコロナ政策の事実上の解除でようやく国内旅行(いわゆる旅行会社手配によるパッケージの団体ツアー)が解禁されたのだ。
実に3年近くも国内観光業が禁止されていたわけだ。当然ながら、多くの民間の旅行会社は倒産したか、業態変更を余儀なくされた。
中国の旅行会社にとっては、再び泣きっ面に蜂の春節となりそうだ。
中国人訪日客は、報道されているほどは来ないだろうという見通しは、日本で中国からのインバウンド需要を期待している人たちには、悲報となりそうだ。
しかし、訪日中国人へ危機感を持ち、あまり歓迎していない人たちにとっては、朗報なのかもしれない。