「2023年の目標に核兵器の大量生産」金正恩氏
「2023年の目標に核兵器の大量生産」金正恩氏
北朝鮮の朝鮮中央通信は1月1日、金正恩(キム・ジョンウン)総書記が、核兵器の大量生産を2023年の目標として掲げたと伝えた。
報道によると、昨年12月26から31日まで開催された朝鮮労働党中央委員会第8期第6回総会拡大会議で、正恩氏が、2023年度の「核武力及び国防発展の変革的戦略」を提示した。
新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)や軍事衛星の早期打ち上げを表明するなど、米韓への対立姿勢を鮮明にした。
2023年もミサイル実験が続く見通し
北朝鮮は新年早々、日本海に向けて短距離弾道ミサイル1発を発射した。1月1日のミサイル発射は極めて異例である。
昨年は、歴代最多となる90発以上のミサイルを発射している。
正恩氏は会議で、「迅速な核反撃能力を基本使命とする別のICBMシステムを開発する」との方針を示していることから、新型兵器開発のため、2023年もミサイル実験を繰り返す見通しである。
なお、北朝鮮が目標とするICBMの性能について、詳細は明かされていない。
北朝鮮はすでに、米国本土全域を攻撃可能とされるICBM「火星17」型を保有していることから、迎撃が難しいとされる固定燃料搭載型を目指している可能性がある。
正恩氏、核攻撃を示唆
北朝鮮はこれまで、核兵器保有を敵対勢力からの“自衛”のためとしてきたが、今回の会議では核の攻撃使用を示唆する発言が見られた。
正恩氏は、核兵器保有の目的について、戦争抑制が「第1の任務」とした上で、「第2の使命は防衛でない別のものだ」と強調し、米韓をけん制した。
慎重な言い回しであるが、自衛の域を超えた核攻撃を示唆した発言とみられる。
韓国国防省は1日、正恩氏の発言について、「核使用を企てれば金正恩政権は終わる」と猛反発を寄せている。
米韓からの「圧殺策動」に苦しむ北朝鮮
正恩氏が核攻撃まで示唆した背景には、昨年一層深刻化した米国や韓国との対立がある。
正恩氏は会議で、米国や韓国などの敵対勢力が、北朝鮮を孤立させ、圧殺するための策動を実行していると指摘。
また、日米韓の連携の動きを、アジア版北大西洋条約機構(NATO)のような新たな軍事ブロック形成に没頭していると批判した。
特に米国に対する敵対心は強く、昨年、核打撃手段を韓国に常時配備する水準で持ち込み、北朝鮮への軍事的圧迫を強めたと非難している。
正恩氏は、このような敵対勢力の圧力から自国の主権と安全を守るためには、「圧倒的な軍事力強化」が必要だと結論付けている。
その口ぶりから、米韓からの「圧殺策動」に耐えかねているようだ。
だが、米朝・南北は互いに譲らない姿勢を示しているため、2023年も対立構図が続く見通しである。
正恩氏の最側近である軍幹部が解任
なお、今回の会議では、軍指導部の人事も行われ、軍総参謀長らが交代した。
注目が寄せられているのは、正恩氏の最側近とされる朴正天(パク・ジョンチョン)党軍事委員会副委員長兼党書記が解任されたことである。
朴氏は、新型ミサイル試射を成功させた功績により19年9月に朝鮮人民軍総参謀長に就任。一時は降格されたこともあったが、朝鮮人民軍で元帥にまで昇進している。
党中枢の政治局常務委員会にも入っており、党・軍の両方で重要ポストを務めてきたのである。
そのような朴氏の突然の解任について、理由は明かされていない。
今回の軍幹部の人事は、北朝鮮の核・ミサイル開発戦略と無関係ではないとみられ、今後の朝鮮人民軍の動向に注目が寄せられる。
八島 有佑
@yashiima