各国で中国からの入国者を規制
日本政府は30日から中国からの入国者への水際対策を強化する。
米国やイタリアも、陰性証明提出や到着時の抗原検査実施を発表するなど、中国からの入国者への規制の動きが世界へ広がっている。
一部識者からは、中国からの入国を全面禁止するように求めるなど、まるで新型コロナウイルスがパンデミックと呼ばれる直前の2020年2月の日本を見ているかのようだ。
中国は、来年1月8日から入国時のPCR検査や入国後の5日間の強制隔離などを撤廃すると発表。各メディアは、これにより中国が海外旅行を解禁すると報じている。
しかし、中国への入国は緩和されても、中国人の出国は、来年8日以降も引き続き規制が続く見込みだ。そのため、来年8日以降に中国人が大挙して訪日することはないとみられる。
コロナ禍前、2019年の訪日中国人は959万人で過去最高だった。つまり、いきなりこの状況に戻ることはなさそうだ。
新規発給や更新が停止されていた中国のパスポート
中国の旅行会社へ取材を進めていくと、現在、中国人の新規パスポート発給や更新は停止されているとことがわかった。
中国人がパスポートを申請するためには、渡航先の企業や団体からの招聘(しょうへい)状(インビテーション)、宿泊先ホテルを記載した旅程表、相手国側の保証人名と連絡先等を公安へ提出しないと発給されない。
この規制は2021年の春から始まっており、現在も継続されている(パスポートの有効期限は最長10年)。
要するに、ビジネス出張などの目的が作れる経営者などを除き、学生や一般の会社員などはパスポートを申請することもできない状況にあるようだ。
また、旅行目的の出国も引き続き禁止されている。
たとえば、日本への入国に必要なビザ申請は、指定の旅行会社を通す必要があるため、中国政府は国別に出国者を細かくコントロールすることができる。
今後、新たな緩和がない限りは、個人ビザを取得しないと、訪日することは難しいということになる。
旅行会社によると、富裕層や日本に親族がいる中国人は個人ビザを取得して日本へという問い合わせが急増しているとのこと。
習近平政権は中国人を出国させたくない
昨今、世界的に問題になっている中国政府が設置したとされる海外警察署にも関係しているが、習近平政権は基本的に中国人の海外渡航を制限したいと考えている。
人民元の海外流失を防ぎたいという思惑もあるが、何よりも日本など自由主義国へ行ってしまうと、長年にわたって刷り込んできた中国共産党史観が崩れてしまうことを問題視しているからだ。
習近平国家主席は、毛沢東時代をロールモデルに鎖国政策による内政、良く言えば内需重視を政策の基盤にしている。
そんな習近平政権にとって新型コロナは、中国人の出国を合法的に止めることができる最適な理由になったとわけだ。
中国関係筋によると、今後も新型コロナなどを理由に入国は緩和しても、出国は規制し続けるとみられる。
それでもあらゆる手段を駆使して多くの中国人が「脱中」して訪日するとは思われるが。