『赤い水曜日』著者を迎え慰安婦問題シンポジウム

『赤い水曜日』著者を迎え慰安婦問題シンポジウム

慰安婦問題を巡る日韓合同シンポジウムで講演する金柄憲氏(11月16日・文京シビックスカイホール・著者撮影)

 「慰安婦問題を巡る日韓合同シンポジウム」が、国際歴史論戦研究所の主催で11月16日、東京文京区で開かれ、韓国側からは国史教科書研究所の金柄憲(キム・ビョンホン)所長が参加した。

 金柄憲氏は、「慰安婦法廃止国民運動」の代表として、慰安婦少女像の撤去を求めて毎週水曜日、マイクとプラカードを手にしてソウルの旧日本大使館の前に立つだけでなく、慰安婦像がある韓国内各地のほか、ドイツ・ベルリンにまで押しかけ活動している。

 また最近、邦訳が出版された『赤い水曜日 慰安婦運動30年の嘘』(文藝春秋)の著者でもある。

 シンポジウムで金柄憲氏は、韓国の小中高教科書で扱われている慰安婦に関する記述について報告し、「韓国の教科書で教えられる慰安婦に関する記述は、すべて嘘(うそ)であり、虚偽・捏造教育が行われている。日本への憎悪心をたきつけるだけでなく、未熟な子供たちに性暴力や性奴隷などという言葉を使って恐怖を与え、情緒的虐待を行っている」と主張した。

 その上で「うそをつくことは国を亡ぼすことであり、何の国益にもならない。子供たちの教科書から慰安婦に関する記述がなくなるまで戦う」と決意を語っていた。

「慰安婦強制動員の証拠は山ほどある」と言うけれど

 教科書の中身を具体的に見てみよう。

 「小学校社会5-2」(5年生2学期用)には、少女像とその周囲で行われる水曜デモの写真とともに、「日本軍慰安婦とは、日本軍が侵略戦争を起した後、日本軍と日本政府が戦場に強制的に動員し、持続的に性暴力と人権侵害を加えた女性を指す」とある。

 これについて金所長は、「日本軍によって強制的に動員された」とする証拠があるのかと教科書の執筆者に問い合わせた。

 それに対する回答は、「日本の官憲が関与して日本軍慰安婦を動員したという資料は山のようにある」とし、その根拠として日本軍の「野戦酒保規定」と「慰安所規定」をあげ、さらに「存命する日本軍慰安婦被害者の方々がその証拠だ」と回答したという。

 しかし、野戦酒保規定に出てくる「慰安施設」とは健全な娯楽施設のことであり「慰安所」とは関係ない。

 また、慰安所規定も慰安所の主人(抱え主)や利用する兵士が守るべき事項を定めたもので、いずれも「慰安婦の強制動員」を証明するものではない。

 金所長が「強制動員したという証拠を1つ2つ例示せよ」と迫ると、それには答えず、「歴史的事実は歴史家によって作られる」「教科書の大部分は、歴史学者が歴史的事実として受け入れる内容で構成される」という訳のわからない“歴史講義”でごまかされたという(赤い水曜日P329~31)。

「国史」教科書の表紙には必ず少女像、慰安婦は必須授業?

「国史」教科書の表紙には必ず少女像、慰安婦は必須授業?

『赤い水曜日 慰安婦運動30年の嘘』(文藝春秋)

「国史」教科書の表紙には必ず少女像、慰安婦は必須授業?

 高校の歴史教科書「国史」は、出版社9社から発行されているが、それらの教科書の表紙には、韓国の歴史的な建物や人物の写真とともに、少女像の写真が必ず使われている。

 さらに少女像に関する記述では、「日本軍慰安婦―性暴力被害者から世界の人権運動の中心へ」(東亜出版)、「集会に参加した人々は、過去の日本の侵略戦争中に起きた様々な蛮行に対し、日本政府から心からの謝罪を求めている」(金星出版社)、「歴史と正義が生きている限り、真実は隠すことはできない。日本政府は公式的に謝罪し賠償せよ!」(未来N)など、必ず政治的な主張、スローガンがつけられている。

 なにやら「慰安婦問題」を学ぶことは韓国高校生の必須授業であり、韓国国民となる必須関門のようだ。

 志学社の高校教科書は、「日本軍は満州事変の時期から軍慰安所を運営し、韓国をはじめ中国、東南アジアなどで数多くの若い女性を日本軍慰安婦という名前で強制動員した」(P207)と記述している。

 この「日本軍は…数多くの若い女性を…強制動員した」という記述は、すべての教科書に共通する慰安婦についての説明だ。

 しかし、慰安婦支援団体「挺対協」が元慰安婦に聞き取ってまとめた全8巻の「証言集」の中には、日本軍によって強制動員されたと具体的に証言した元慰安婦は1人もいないことを、金柄憲氏はその著書で明らかにしている。

韓国「嘘をつかない」が慰安婦問題解決の唯一の方法であり国益となるへ続く。

小須田 秀幸(こすだ ひでゆき)
NHK香港支局長として1989~91年、1999~2003年駐在。訳書に許家屯『香港回収工作 上』、『香港回収工作 下』、パーシー・クラドック『中国との格闘―あるイギリス外交官の回想』(いずれも筑摩書房)。2019年から2022年8月までKBSワールドラジオ日本語放送で日本向けニュースの校閲を担当。「ノッポさんの歴史ぶらり旅」をKBS日本語放送のウェブサイトとYouTubeで発表している。

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