日本人の1.5倍以上を食べる韓国人
韓国人は世界でトップクラスのインスタントラーメンをよく食べる国民だという。
1人あたり年間消費量73.3食にもなり、日本人1人あたりの年間消費量は47.7食だから、その差は歴然。4~5日に1回は食べている計算になる(世界ラーメン協会、日本即席食品工業協会・2021年)。
この旺盛な国内需要に後押しされてメーカーの設備投資も盛んで、世界各地に輸出されている。
現在は、どこの国でもスーパーマーケットやコンビニエンスストアの陳列棚には、韓国メーカーの袋麺やカップ麺がずらりと並ぶ。
また、昨年はニューヨーク・タイムズが企画した「ザ・ベスト インスタントヌードル」で、韓国の農心が製造する「辛ラーメンブラック」が1位に輝いている。
今や韓国は、生産量に加えてブランド力でも世界1のインスタントラーメン大国ではあるのだが…、その建国神話については、知られたくない秘密があった。
インスタントラーメンの発祥国は日本
インスタントラーメンの発祥国が日本であることは、日本人なら誰もが知っている事実である。
日清食品創業者の安藤百福氏が、昭和33年(1958)に麺の瞬間油熱乾燥法を発見し、長期保存可能な完全乾燥麺を作った。
これを製品化した「チキンラーメン」がヒットして、インスタントラーメンが世に普及した。
「特許を独占して野中の1本杉として栄えるより、大きな森として発展したほうが良い」
という安藤氏の考えにより、日清食品はその製法特許権を公開・譲渡。これによってメーカーも増えて、様々な銘柄が発売されるようになる。
チキンラーメンの発売から5年が過ぎた1963年には、韓国初のインスタントラーメンである「三養ラーメン」が発売されるのだが、その製法や生産に関するノウハウは、すべて日本から供与されたものだった。
企業秘密を韓国メーカーに無償供与
当時の韓国は世界最貧国の1つ。朝鮮戦争で荒廃した国土は復興の途上にあり、主食である米が不足して食糧事情も悪い。
米の代用となり手軽に食べられる食品が求められていた。
インスタントラーメンがそれにぴったりと目をつけた三養食品創業者・全仲潤(チョン・ジュンユン)氏は、製法を伝授してもらうために来日する。
全氏は日清食品と並ぶ大手メーカーの明星食品を訪問して、
「国民のお腹を満たして、元気にしてやりたい」
と、当時の奥井清澄社長を相手に直談判で熱弁をふるう。その意気に打たれた奥井社長は、
「技術料やロイヤリティは不要です」
そう言って全面協力を約束した。製造技術などのノウハウに加えて、最も重要な企業秘密である原料の配合表までも、すべて無償で供与したという。
普通ならあり得ないことだった。それを知った他メーカーは驚き、当時は日本の食品業界で大きな話題になったとか。
明星食品からの技術導入によって発売にこぎつけた三養ラーメンはヒットし、その後は他社のブランドも続々と誕生。
インスタントラーメンは韓国人の食生活に不可欠な存在となった。
しかし、毎日のようにインスタントラーメンを食べ続けている多くの韓国人に、この創世神話を知る者はほとんどいない。
青山 誠(あおやま まこと)
日本や近隣アジアの近代・現代史が得意分野。著書に『浪花千栄子』(角川文庫)、『太平洋戦争の収支決算報告』(彩図社)、『江戸三〇〇藩城下町をゆく』(双葉社新書)、『日韓併合の収支決算報告~〝投資と回収〟から見た「植民地・朝鮮」~』(彩図社)、近著『明治維新の収支決算報告』(彩図社、2022年)。「さんたつ by 散歩の達人」で連載中。