謎の北朝鮮華僑の実生活へ迫る
中朝貿易関係者や中国朝鮮族と話をしているとたまに耳にする北朝鮮華僑。
日本では知られていない存在だが、一般の中国人の間でもほとんど知られていない謎の存在だったりする。
北朝鮮華僑が中朝貿易で非常に大きな役割を果たして、密輸だったり、偽造品製造などにも深く関わっているとされる。
中国SNSに「金正恩時代の朝鮮華僑の実像」として北朝鮮華僑の実生活を紹介する投稿がある。これを紹介したい。
北朝鮮に住む華僑なので、在朝華僑と表記するのが日本語的だが、原文では、「朝鮮華僑」や「朝鮮の華僑」となっているので原文に近い表記とさせてもらった。
兵役など一部義務が免除
北朝鮮にいる華僑の存在は、中国国内メディアではほとんど報じられておらず、常に謎めいた存在だった。
北朝鮮華僑は、基本的に漢民族だ。その多くが中華民国時代に朝鮮半島へ逃れたり、文化大革命の時に北朝鮮へ渡ったりした人たちだったりする。
北朝鮮にいる華僑の多くは、過去3世代にわたって北朝鮮に住んでいる。現在、およそ1万人の華僑が北朝鮮にいて、そのほとんどが平壌に住んでいる。
1980年代、北朝鮮華僑は貧困にあえいでいた。
しかし、中国の改革開放の波に乗り、北朝鮮華僑は北朝鮮で商売に成功し、大儲けして急速に富を蓄えるようになった。
北朝鮮の華僑は、一般の北朝鮮人と同様に、無償で義務教育を受け、医療や住居などを無償提供されている。納税も必要ない。
しかし、華僑は政治活動へ参加する機会はない。また、公務員や政府関係へ勤めることもできない。
その一方で、北朝鮮の一般国民の多くが負う義務が免除されている。
たとえば、北朝鮮では一定の年齢に達した男性は兵役の義務があるが、華僑は免除されている。
中国との往来特権を生かした貿易業
もちろん、北朝鮮華僑の全員が経済的に恵まれているわけではない。中国に親戚がいて、ビジネス手段を持っている華僑は、比較的に良い暮らしをしている。
ところが、中国に親戚がおらず、北朝鮮の地方に住む華僑は稼ぐ手段に限度があり、経済的には恵まれていない。
北朝鮮の華僑が現地の北朝鮮人と結婚すると、生まれた子供は北朝鮮国籍となる。しかし、華僑同士が結婚した場合は、生まれた子供は華僑のままだ。
北朝鮮にいる華僑は、その特別な立場ゆえ、いつでも中国と北朝鮮を往来することができる。
そのため、華僑の富の源である中朝貿易に従事する上で当然ながら高いアドバンテージを発揮する。
北朝鮮は厳格な計画経済の国であり、一般的に北朝鮮人が起業したり、個人で商業活動をすることを禁じている。
だからこそ、計画経済下の北朝鮮には、巨大な隙間市場が存在する。
強力な規制とライバル不在の北朝鮮には、中国の改革開放初期と同じような商売をすれば富を築くチャンスがたくさん存在するのだ。