日本人16人がスパイ容疑。現在も4人服役中

日本人16人がスパイ容疑。現在も4人服役中

訪中したプーチン大統領と会談する習近平国家主席(2022年2月) 出典 kremlin.ru [Public domain], via Wikimedia Commons

 中国北京でスパイ活動をしたとして懲役6年の判決を受けた鈴木英司さん(65)が11日に刑期を終えて出所し帰国した。

 外務省によれば、2015年5月以降、16人の日本人がスパイ容疑で拘束。10人が起訴され懲役3~15年を受け現在4人服役中(4人帰国済み、1人死亡)となっている。

 鈴木さんの件は、毎日新聞が詳しく報じている。26日配信の記事(7カ月で太陽見たのは15分 ぬれぎぬのスパイ容疑 中国で懲役6年)には、「習政権下で拘束された日本人の実情が詳細に明らかになるのは極めて異例」と書かれている。

 確かにそうだ。中国のスパイ容疑で拘束されると、どのような扱いを受けるか、これまで具体的には報じられていない。

 その理由は、中国当局が担当する国家安全局とのやり取りの内容や拘置所、裁判、刑務所環境などを口外にしないように強く口止めしているからだ。体験者に聞くと半ば脅しに近いようだ。

中国当局が脅している?

 この脅しは、公安が担当するスパイ容疑以外の一般事件、日本人が多いのは、オーバーステイ、脱税、回売春、麻薬の運搬、傷害容疑などで勾留所や拘置所、刑務所などへ収監された経験がある人の多くが同じような脅しを受けたと証言している。

 そこから考えると、スパイ容疑での拘束者には、より強く脅していると想像できる。

 恐怖が骨の芯まで染み込んでいる効果なのか、スパイ容疑で拘束されると、どのような扱いを受けるのかなど、詳細が明らかになることは、今までなかった。

 世界各国のメディアが報じているのは、2018年12月に同じく北京でスパイ容疑で拘束されて、昨年9月に帰国したカナダ人の元外交官マイケル・コブリグ氏へ接見したカナダ大使が明かした情報や中国の公安関係者の話などから漏れるように伝わってきた程度しかなかった。

覚悟を決めての証言か

 中国の法律上、鈴木さんもカナダ人の2人のマイケル氏も刑期を終えたことになるので、「合法的」に中国へ再入国できるということになる。

 しかし、中国で半年上の拘束経験がある日本人に聞くと、「2度と行きたくない」と話すように、行きたいとは思わないのかもしれない。

 それでも「口外するな」という脅しが効くのは、「中国の知人や関係者が身代わり的に不利益を被ったり、帰国後も監視され続けているという強い恐怖心を抱かせるような脅しを繰り返し刷り込まれるからだ」と前出の日本人男性は話す。

 鈴木さんがこれだけ具体的に証言するのは、2度と中国へ行かないという覚悟を決めているかだと思われる。

誰でも知っているニュースが違法情報扱い?

 鈴木さんは毎日新聞のインタビューの中で、スパイ活動に該当する“違法情報”とみなされたのは、北朝鮮の張成沢(チャン・ソンテク)氏が、2013年12月に処刑された情報が、違法情報にあたると取り調べの国家安全局担当者から聞かされたと明かす。

 中国以外、世界中どこでも国際ニュースで報じられた北朝鮮ニュースだ。

 これが違法情報とされるのであれば、中国ではどんな情報でもスパイ罪にできるということを意味する。

 事実、張成沢氏が処刑されたニュースは、中国では情報統制されて一切報じられなかった。

 この件は、当時、中国に滞在していた日本人や朝鮮労働党の子息として中国で貿易に携わり、その数年後に脱北した脱北者も証言している。

反スパイ防止法=遡及適応

 反スパイ防止法が施行されたのは、習近平体制となった2014年11月。鈴木さんが違法情報とされた張成沢処刑はその1年前の出来事だ。

 つまり、遡及適応されたことになる。

 中国は国家転覆罪などの重要な罪には、法の不遡及は適応せず、遡及処罰をすることを半ば公言している。

 要するに、反スパイ防止法案件も遡及処罰しているということだ。

 こうなるともはや何でもありだ。

 30年前にさかのぼって拘束し、国家機密を理由にすべてを非公開のままに反スパイ防止法の最高刑死刑にすることもできる。それも憲法を超越する中国共産党トップの一言で。

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