韓国プロテスタント教会が最も警戒するカルト教団

韓国プロテスタント教会が最も警戒するカルト教団

献血活動についての投稿が多い新天地イエスの公式SNS 出典 新天地イエス教証しの幕屋聖殿公式フェイスブック

 韓国発祥の新興宗教、新天地イエス教会(正式名称は新天地イエス教証しの幕屋聖殿)が、日本でオンラインを通じた宣教活動を活発化させている。

 その特徴は、最初は新天地イエス教会を名乗らずに近づき、オンラインセミナーへの出席を勧誘するというもの。

 こうした宣教手法は韓国でも問題になっており、日本においても今後注意する必要がある。

 新天地イエス教会は、李萬煕(イ・マンヒ、現在91歳)総会長が1984年に創設したキリスト教系新興宗教。積極的な宣教活動で信者を増やし、信徒数は2020年の時点で公称30万人。

 韓国は人口の27.6%がクリスチャン(2015年)である。

 新天地イエス教は、こうしたクリスチャンをターゲットに宣教を行い、信徒を引き抜いたり、既存の教会をまるごと「乗っ取る」という強引なやり方で信徒を獲得してきた。

 韓国のプロテスタント教会は、2000年代以前は「統一教会」を最も警戒していたが、今では新天地イエス教会を最も警戒すべき“カルト教団”と位置づけている。

ユーチューブでオンラインセミナー

ユーチューブでオンラインセミナー

新天地イエスの日本語YouTubeセミナー 出典 新天地イエス教アンデレ枝派大阪公式フェイスブック

 新天地イエス教会の名が韓国で一気に知れ渡ったのは、2020年初めの新型コロナウイルス大規模クラスターがきっかけだ。

 新天地大邱教会で5000人を超える感染者を出した。教会は、当局が要請した信徒名簿の提出を拒否し、韓国世論の反発を買うことに。

 新天地イエス教会はこの事件のあと、教会の集団礼拝をオンライン礼拝に切り替えた。

 また、韓国内では否定的イメージが高まったため、日本など、海外で新しい信者の獲得に力を入れるようになった。

 新天地イエス教会系列のメディアによれば、傘下の研修組織シオンキリスト教宣教センターは、2021年10月から週2回、ユーチューブでオンライン講義を配信している。

 日本でもこの映像を使ったオンラインセミナーが行われており、noteやインスタグラムなどのSNS、語学学習アプリなどを通じてセミナーへの勧誘を積極的に行っている。

 宣教活動は宗教団体の正当な活動であるが、新天地イエス教会の場合、新天地イエス教会と名乗らずに宣教するところに問題があると指摘されている。

セミナーの中では統一教会批判も

 日本でも登録者の多いHelloTalk(ハロートーク)という語学学習アプリでは、今年の初めごろから一部の韓国人登録者により「韓国語や韓国文化を紹介します。日韓交流のセミナーに参加しませんか?」などという勧誘が行われている。

 セミナーを主催しているのは、「花より日韓」や「JYMA」という団体。

 実際にセミナーに参加した複数の日本人女性によれば、「セミナーはZoom(ズーム)で行われ、最初の頃は韓国語や文化について取り上げられるが、数回参加しているうちに、急に聖書の話になる」のだそうだ。

 セミナーは、週2回の全体セミナーとグループに分かれた週1回のセミナーがあり、1時間ほどの映像を聴講した後、小グループに分かれて30分ほど感想を述べ合うという構成だ。欠席すると補講への参加を強く求められる。

 セミナーには100人ほどが参加し、半分以上が韓国人。日本人1人に対して韓国人数名のグループLINEを組まされ、日本人同士の接触はできないようになっているという。

 セミナーでは、新天地イエス教会の名前はいっさい出さない。

 安倍元首相銃撃死亡事件の直後のセミナーでは、「間違った宗教に入らないように気をつけてください」などと、暗に統一教会を批判するような話がされたそうだ。

韓国の裁判では無罪判決が出たが…

 「正体を明かさずに宣教する」という方法は韓国でも共通しており、韓国では、このやり方を巡って複数の訴訟が提起されている。

 2022年8月11日の聯合ニュースは、新天地イエス教会の元信徒3人が新天地の大田(テジョン)支部教会と信徒を相手取って起こした民事訴訟で、大法院(最高裁)判決が出たことを伝えている。

 原告らは、「新天地の信徒たちが素性を隠して近づき、教理を教え込み、これによって自由意志を喪失した状態で長期間、活動することを余儀なくされた」として損害賠償を求めていた。

 1審と2審では原告の主張が一部認められたが、大法院は、「原告が研修の途中で新天地イエス教会であることに気づいた後も研修を受け続けていたこと」「新天地の支部教会が訴訟当事者としてふさわしくないこと」を理由に、2審判決破棄、下級審に差し戻した。

 ただし、判決の中で「被告が新天地とは別の教団の信徒であると偽ったのは、社会的・倫理的に非難されるべき行為」とし、「宣教行為が度を越えて社会的妥当性を欠き、相手の宗教選択の自由を喪失させた場合、不法行為とみなしうる」と判示した。

 新天地教会に関しては、これ以外に3件の類似訴訟が係争中だそうだ。

コロナ禍の新しい勧誘も「不法」の疑いが濃厚

 日本で行われているオンラインセミナーを通じた宣教活動も、「正体を明かさない宣教行為」という点で共通しており、「不法」の疑いが濃厚である。

 統一教会と同様の被害を出さないためにも、新天地イエス教会の今後の活動を注視する必要がある。

 KWTより。著者のブログ犬鍋のヨロマル漫談「日本で宣教する新天地イエス教会(4月4日)」には、日本での活動実態などを詳細に伝える体験者からのコメントが寄せられている。

 コロナ禍だから生まれたユーチューブやSNSを駆使したある意味、新時代のカルト勧誘。

 韓国語やK-POP、韓国ドラマ、韓国料理などを餌に宣教する具体的な手口を知ることで、被害に遭わないよう注意してもらいたい。

犬鍋 浩(いぬなべ ひろし)
1961年東京生まれ。1996年~2007年、韓国ソウルに居住。帰国後も市井のコリアンウォッチャーとして自身のブログで発信を続けている。
犬鍋のヨロマル漫談

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