2019年10月の藤本氏を伝えた英国人女性
平壌にいるはずの藤本健二氏の消息は、いまだ不明なままだ。
新型コロナウイルスによる入国停止で「藤本氏と会った」という情報が途絶えているからだ。
「金正日(キム・ジョンイル)の料理人」の異名を持つ藤本氏と最後に会ったは誰であろうか。
おそらく、ゾーイ・スティーブンス氏ではないだろうか。
ゾーイ氏は、高麗ツアーズ(中国北京)のツアーリーダーを務める英国人女性。
彼女は、自身のブログに2019年10月「日本料理たかはし」で食事をし、藤本氏と握手をしている写真を掲載している。
明確な日付は書かれていないが、来店日は19年10月で、ブログは19年10月23日に公開されている。
ブログ内容は、藤本さんの経歴、店の場所、特徴などを紹介し、価格高い(50ドル~)として、「藤本健二さんのお店は、平壌で最も高級なレストランの1つ」だと紹介している。
無事は確認されるも、なぜか日本人は行けない
藤本健二氏は、2019年6月末、北朝鮮当局によって拘束され、店も閉店したとの情報が流れた。
しかし、その直後に英国大使館関係者が、藤本氏の所在を伝える写真を発信したことで、無事が確認された。
ところが、藤本氏拘束の情報が流れる直前から、なぜか日本人訪朝者が、ツアーの有料オプションとして「たかはしへ行きたい」と希望しても、事実上、断られて来店できない事態が起こっていた。
藤本氏の無事が確認された以降も同様だった。
「現地でガイドへ何度も頼み込んだのですが、『案内できない。行けない』と直接的には言わず、話をはぐらかされて、スルーされたって感じです」(19年9月上旬に平壌を訪れた日本人男性)
前出の日本人旅行者と同時期には、中国遼寧省瀋陽に10年以上駐在していた北朝鮮人男性が中国から視察に訪れていた朝鮮族男性と一緒に来店している。
この男性たちによると、事前に来店することを伝えたら、藤本氏が来てくれて、カウンターで寿司を握ってくれたという。
この時、藤本氏から聞いた話では、「現在、毎日は来ていないが、予約など事前連絡があれば来ている」そうだ。
コロナ禍で中国人からの情報も途絶える
コロナ禍前であれば、観光目的の外国人より、多少の自由行動が許されるビジネス目的の中国人がいたので、藤本氏の情報も少ないながらも入ってきていた。
しかし、2020年2月以降は、それもまったく入ってきていない。
今回、高麗ツアーズのゾーイ氏が、藤本健二氏の写真を伝える最後の人物であろうと思われるが、その3か月後の新型コロナによる国境封鎖直前まで、藤本氏と会った中国人はいるとみられる。