高校無償化訴訟は全敗訴

高校無償化訴訟は全敗訴

朝鮮大学校正門(筆者撮影) 

高校無償化訴訟は全敗訴

 在日コリアンは、自らを取り巻く制度問題の改善に長年取り組んできたが、朝鮮学校を巡る差別撤廃は大きなテーマの1つとなっている。

 2010年代には、朝鮮学校を高校無償化制度の対象から除外した国の判断の是非を問う裁判が全国で展開した。

 無償化訴訟については2021年までに、全国(東京、大阪、名古屋、広島、福岡)で提訴された5訴訟のすべてで、原告側の敗訴が最高裁で確定した。

 だが、朝鮮学校や支援団体はこれを“不当判決”だと訴え、その後も様々な支援制度から外国人学校が除外されていることに対して、反対運動を行なっている。

 その中でも、朝鮮学校が税制上の優遇制度から除外されていることについて関係者は長年、批判を寄せている。

 この問題は、朝鮮学校の将来に直結するという指摘もある。

朝鮮学校は税制上の優遇措置から除外

 朝鮮学校側が問題にしているのは、指定寄付金制度だ。

 一般の学校では、その公益性を考慮し、寄付が集まりやすくするために税制上の優遇措置がなされている。

 たとえば、学校の改築工事に対して寄付する場合、法人であれば全額が損金算入、個人であれば一定額まで所得控除される。

 2003年からは「初等教育又は中等教育を外国語により施す各種学校」も対象となり、欧米系のインターナショナルスクールなどの各種学校にも適用された。

 一方で、朝鮮学校や中華学校などは「公益性がない」との理由から、除外されたままである。

 これを朝鮮学校や中華学校は差別的処遇だと声を上げてきた。
 
 日弁連は、2008年にこの措置を人権侵害であるとし、早急に是正するよう日本政府に対して勧告を出したものの、政府の態度に変わりはなかった。

高校無償化全敗訴で路線に変化か

 ただ、前述の通り、2010年代は新たに生じた高校無償化問題などが活動の中心となっていた。

 寄付金制度が問題視されなくなったわけではなく、問題意識は常にあったという。

 ある朝鮮学校支援団体関係者は、「高校無償化問題が解決すれば、税制差別などすべての問題がうまくいくと考えていた」と明かした。

 だが、高校無償化訴訟が全敗訴したことで、改めて寄付金制度の問題を解決しなければならないという問題意識が共有されるようになったようだ。

 今年6月には、「朝鮮学校『無償化』排除に反対する連絡会」や朝鮮学校の生徒、教員らが、文科省に要請を行った。

 その中で、寄附金の税制優遇をはじめ様々な支援制度から外国人学校が除外されている問題について改善を訴えている。

寄付金に支えられている朝鮮学校

 ある朝鮮総連(在日本朝鮮人総聯合会)に所属する関係者は、「公的補助が乏しい全国の朝鮮学校の運営は、同胞などの寄付金に支えられている」と述べ、だからこそ、指定寄付金制度が重要だと指摘した。

 制度の対象となり、寄付をすることで所得控除が受けられるのであれば、在日コリアンにとっても朝鮮学校に寄付しようという動機付けになるからだ。

 確かに、どうせ何もしないで税金を取られるのであれば、母校や地域の学校に寄付しようという人は増えるかもしれない。

総連関係者「日本政府の狙いは朝鮮学校の弱体化」

 前出の総連関係者は、「寄付金制度にしても、高校無償化除外にしても、日本政府の狙いは、朝鮮学校の弱体化にある」と指摘し、政府が簡単に制度の是正に応じることはないだろうと指摘した。

 指定寄付金制度の対象になって寄付金が集まれば、朝鮮学校の勢いが増すことになるのに、北朝鮮を敵視する日本政府が、今さら制度を是正する必要はないと言う。

 逆に、朝鮮学校の運営が厳しくなれば、様々な制度的恩恵を受けられる日本の学校に進学する在日コリアンの子供が増えるかもしれない。

 これこそが、日本政府の狙いだとして、同関係者は、「このままだと、朝鮮学校や総連などの在日コミュニティは先細りしてしまう」と危機感を募らせた。

 日本側は、朝鮮学校への差別的取扱いを否定しているが、指定寄付金制度や高校無償化制度などでの適用除外は、朝鮮学校にとって無視できない問題であることは確かだ。

 北朝鮮は今年2月、海外同胞権益擁護法を制定し、在日同胞の権利問題にも関心を寄せており、今後、何らかの動きが出てくる可能性がある。

八島 有佑
@yashiima

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2 Comments

  1. 朝鮮高校、裁判負けてたのね。
    じぶんは補助金反対だけど朝鮮学校が差別的取り扱いなのはまあそうだろねという感じ。

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