中年男性3人が志願軍公園で入浴?水浴び?
「英雄たちに失礼だ」「逮捕して懲役刑にしろ!」「謝れ」などの激しい批判で拡散しているのは、中国で撮影されたショート動画だ。
5日に初投稿されたと思われる動画には、中年男性3人が水浴びをしている。その場所が問題視されている。
遼寧省丹東の志願軍公園という朝鮮戦争へ参戦した中国人民志願軍をたたえる軍事公園内だったりするからだ。
志願軍公園は、2020年10月22日に開園。13ヘクタールある園内は、7つのテーマで構成されている。
その1つに巨大な軍用水筒のオブジェがあり、水筒からは噴水のように水が吹き出している。
炎上した動画は、「このような公共の場所で、このような行為はふさわしくない。撮影時、子供たちが水遊びをしていたが、この大人たちを見て、どう思うのだろうか?志願兵たちはどう感じるのだろうか?私は彼らを強く軽蔑する。怒りを禁じえない」と撮影者が音声を入れている。
また、動画には、男3人が入浴(中国語の「洗澡」は入浴、体を洗う、水浴びなどの意味も含む)と説明文が添えられている。
拡散されたSNS微博(ウェイボー)には、5167件のコメント、9万1000を超えるいいねが付いて炎上している。
「大げさすぎる」などが7、8割に
投稿当初、冒頭のような水浴びをしている男性3人への批判コメント一色で埋め尽くされていたが、時間が経つとともに変化が見られる。
「大げさすぎる」「最初は怒りを覚えたけど別に問題ないのでは?」「確かに公共の施設では良くないけど、許される範囲でしょ」「素っ裸で洗髪したり、せっけん使ったりしたら汚すけど、これは汚していない」「むしろ水の有効活用では?」「英雄たちは自分たちが守った子孫が幸せそうだと喜ぶと思うな」などが増え、現在確認できる範囲では、7、8割ほどが、問題行為ではないという内容になっている。
反米ムードを盛り上げるため?
拡散された動画には、#男子在志愿军公园雕像下当众洗澡#というタグがつけられている。
中国で事実上の禁止となっているグーグルで、上記タグを検索すると、TikTok(ティックトック)の中国国内版である抖音(ドウイン)や搜狐(ソーフー)TVなど中国の主要動画共有サイトへ掲載されていることがわかる。
これらのサイトも覗くといずれも動画の再生回数は多いが、コメントの温度はそれほど高くないようだ。
この動画を炎上、注目させたいと「仕掛けた」側は、今年も10月25日の朝鮮戦争参戦日で反米ムードを盛り上げるために、中国唯一の反米公園とも言える志願軍公園で国威発揚を狙ったのかもしれない。
しかし、拡散、炎上はするも、狙いは不発に終わったようだ。
鴨緑江で水浴びする中国人はいない
現実として、丹東対岸の北朝鮮新義州では、特に夏になると鴨緑江で入浴代わりに水浴びをしている子供や大人を見ることができる。
では、丹東側ではどうであろうか、まず見ることはない。鴨緑江の水質が良くないためだろう。
30、40年前だったら、丹東側でも今の北朝鮮のように水浴びをしていたかもしれないが、中国は、この20年で生活水準が大きく上がり、衛生概念も向上したことで、鴨緑江で水浴びする人がいなくなったのだと思われる(冬場に鍛錬のための寒中水泳する中国人は見かける)。
とはいえ、今でも中国各地では、公園など公共施設で、大人が子供のように水浴びをしている風景は珍しいものではない。
ネット民たちの反応は、そんな中国の現実を反映したものではないのだろうか。
今回の炎上を仕掛けた側の狙いは、やや不発に終わるも志願軍公園の存在をアピールすることには成功したと言えそうだ。
中国で最も反米機運が高まる10月25日へ向けて、近日中に別の話題で丹東が注目されることが予想される。
丹東駅から志願軍公園へはタクシーで鴨緑江上流へ向かい15分ほどで行ける。