7月30日、発熱者ゼロ発表
「9月から再開するとの話が出ています」と話すのは、中朝国境の丹東の貿易関係者だ。
1月中旬に再開された鉄道での中朝貿易は、4月末に丹東の新型コロナウイルスまん延による都市封鎖(ロックダウン)で中断されている。
報道では、ウイルスの流入を警戒した北朝鮮側が中断したと伝えられているが、事実は逆で中国側が主導権を握っており、中国側が中断し、現在も継続しているとも言われている。
2週間ほど前の7月19日に日本経済新聞が北朝鮮企業が貿易再開を熱望していると報じ、その続報的に7月31日に読売新聞が『中国との鉄道輸送再開急ぐ北朝鮮、コロナ発熱患者「ゼロ」と発表』と報じている。
そう、5月12日に北朝鮮が初めて新型コロナの感染者を認めてから連日発表していた「発熱者」が7月30日、ゼロになったと発表したのだ。
しかし、この件、「中朝貿易を再開させるためのつじつま合わせではないか?」との声が丹東側でも聞こえてくるのだ。
続いていた丹東のロックダウン
北朝鮮は9月末頃から水稲の収穫が始まるので、食糧事情はその直前が厳しい。
北朝鮮の農業事情に詳しい研究者によれば、8月もイモ類の収穫があるので、収穫できる農産物はゼロではないが、イモ類だけでは厳しい状況は乗り切れないだろうとの見立てを示す。
そうすると、北朝鮮としては、1日でも早く中朝貿易を再開させたいと考えているはずだと前出の研究者は話す。
特に秋の北朝鮮は、9月9日の建国記念日と10月10日の朝鮮労働党創建記念日と2大イベントを控えて、より食料が必要な季節でもある。
実は、北朝鮮が7月30日に発熱者ゼロを発表したのは、丹東側を見て合わせた可能性もありそうだ。
というのも、丹東は4月24日からのロックダウンが6月24日に終了したと中国メディアが報じたことは、6月26日にKWTでも伝えた。
しかし、この報道、国営や官製メディアの報道ではなく、民間メディア(中国のメディは民間でもあっても強い統制下に置かれる)が報じた内容だった。
確かに丹東中心部の外出制限は緩和されたが、部分的な封鎖や閉鎖、営業規制などは継続されていたのだ。
ゼロ発表は丹東に慌てて合わせた?
中国政府は、強権で独裁的なロックダウン(封城)という言葉の使用を避け、別の表現へ使って感染対策としてきた。
7月27日の中国SNS微博(ウェイボー)には、「95日で丹東ようやく全面復活」という投稿が複数確認できる。
投稿は、中国政府を批判したと受け取られないような「配慮」を感じさせる優しい表現を使っている。
今月10日からは、丹東空港の封鎖も解除されて山東省青島への国内線が再開されるとの情報も確認できる。
丹東は、ロックダウン解除と報じられた6月24日からさらに1か月間ちょっと、実質的なロックダウンが継続されていたようだ。
北朝鮮は、丹東の状況を見て、慌てて発熱者をゼロにして丹東に合わせてきたとも考えられる。
つまり、北朝鮮としては、「朝中貿易は、丹東がロックダウンした理由で中断したのだから、ロックダウンは解除されたし、朝鮮も感染者(?)がいなくなった。もう貿易再開できるよね?」と言いたいのではなかろうか。
8月は、北朝鮮が熱望する鉄道での中朝貿易が、1日でも早く再開するのかに注目が集まりそうだ。