サタンの日本が韓国に貢ぐのは当たり前

サタンの日本が韓国に貢ぐのは当たり前

本部棟とされる天正宮博物館(上)と建設中の新たな宮殿・天地鮮鶴苑(著者撮影)

韓国統一教会の「独立王国」 日本人からの金で建つ聖地を訪ねてみたの続き。

 創始者の文鮮明(ムン・ソンミョン)氏は、韓国を「植民地」として支配した日本は堕落した「サタン(悪魔)の国」であり、その罪を償うために「エバの国」=日本が「アダムの国」=韓国に金を貢ぐのは当たり前だという贖罪(しょくざい)史観を説いていた。

 その一方で、韓国で統一教会と言えば財閥の1つと見られているほど、宗教活動より経済活動のほうが有名でもある。

 その中心となっている企業が高麗人参茶で有名な「一和(イルファ)」だ。

 高麗人参エキスや高麗人参茶の輸出では、韓国の輸出シェアの60%を占め、高麗人参を扱う企業としては民間最大手だという。

 また、日韓の間の海峡に海底トンネルを通そうというプロジェクトを呼びかけて資金を集めたり、中国広東省の恵州市に広大な土地を確保し「パンダモータース」という自動車工場を作る計画を立ち上げ、信者達から資金や寄付を募ったりしたこともあった。

 どちらの計画も挫折して、日の目を見ることはなかったが、実現可能性はともかく、莫大な資金を集める知恵と手段には長けているように見える。

日本人信徒のための韓国語教育も

日本人信徒のための韓国語教育も

ソウルにある仙和芸術中・高校(著者撮影)

 また、教育事業にも力を入れ、ソウル市内には教団が運営する芸術専門の中学、高校があり、進学校としても有名なのだという。

 さらに、京畿道にある鮮文大学には、韓国語教育院が併設され、そこで学んでいるのは、日本の信者の子弟や集団結婚で韓国に嫁いだ日本人女性が多いと言われる。

 文鮮明氏は、「神に選ばれた民族の国である韓国は、世界に真理を発信するメシアの国であり、そんな神の国の言葉として韓国語を勉強するのは当然だ」と説いていた。

 結婚できない韓国農村の男性には、「統一教に入信すれば、日本人女性と結婚できる」と勧誘していると言われ、合同結婚式で結婚した日本女性の多くは、実際に韓国の農村に嫁ぐケースが多かった。

 ここにもエバ(女性)国家=日本は、アダム(男性)国家=韓国に持参金を持って嫁ぎ、貢ぐのは当然という教理がある。

日本での活動家は6万人、韓国は1万人程度か

 教団の信者は公称で、韓国では30万人、日本はその倍の60万人、世界では300万人と言われている。

 しかし、日本で実際に集まる旧統一教会関連の票は10万票もなく、実際の活動家は6万人程度と言われる。

 韓国でも実際に活動している信者は1万人程度だという人もいて、普段はそれほど注目を集める存在ではない。

 韓国でカルトと言えば他にもっと話題をさらう教団がいくつもあるからだ。

 実際に周囲の韓国人に、「統一教の本部を見てきた」と言って写真を見せると、「えっ、こんな建物が建っているのか?」と驚き、初めてその存在に関心を寄せる人たちばかりだった。

 韓国人にとっては、前述のような統一教会系の企業や学校のほうが、はるかに名前が知られている。信者の数より、そうした場所で働く人のほうが、はるかに多いのではないかと言われるほど、財閥グループとしての地歩を確立しているようにも見える。

いつまで「植民地史観」のくびきに縛られるのか?

 統一教会は、かつて「国際勝共連合」として反共産主義を掲げ、北朝鮮の脅威を背景に政治家らの支持を集め、日本に進出する手段として使った。

 その後も、日本から金を集める手段として戦前の植民地支配を理由に日本人の贖罪意識を刺激し利用した。

 安倍晋三という政治家が目指したのは、そうした過去の歴史の軛(くびき)から自由になることだったはずだ。

 しかし、皮肉にも、彼らが主張する「植民地史観」を屈服できずに、その前に斃(たお)れたと言えなくもない。

小須田 秀幸(こすだ ひでゆき)
NHK香港支局長として1989~91年、1999~2003年駐在。訳書に許家屯『香港回収工作 上』、『香港回収工作 下』、パーシー・クラドック『中国との格闘―あるイギリス外交官の回想』(いずれも筑摩書房)。2019年から現在までKBSワールドラジオ日本語放送で日本向けニュースの校閲を担当。「ノッポさんの歴史ぶらり旅」をKBS日本語放送のウェブサイトとYouTubeで発表している。

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