日本から北朝鮮に国際電話は可能だが
北朝鮮の国際電話事情は、非常に制限されている。
たとえば、日本から北朝鮮にいる人と国際電話で話すことは可能だが、一部の番号以外、直接相手の番号に架電できない。
基本的に、国外から北朝鮮へ電話をかける場合は、平壌の朝鮮国際通信センターの番号にかける必要がある。
通信センターのオペレーターに相手方の電話番号や企業名を伝えると、そちらに電話をつないでもらえるのだ。
だが、北朝鮮国内のどこの番号にでも、電話を取りついでもらえるわけではない。
「貿易会社など国際電話が許可されている番号にしかつないでもらえないようです」と中朝貿易関係者は明かす。
北朝鮮では国外からの情報が制限されていることもあり、一般家庭に国際電話をかけるのは難しいようだ。
日本から北朝鮮に直電できた時代も
実は、10年以上前には、日本からオペレーターを介さず、北朝鮮の政府機関や企業、ホテルなどに直接電話をかけることができた。
一説によると、日本のマスコミが一時期、北朝鮮の企業などに電話をかけて、「北朝鮮の物資は足りているのか?」「北朝鮮の政権についてどう思うか?」などと質問したことが影響して、ある時から直電が不可になったのだという。
ちなみに、国際通話料金は、国際通信センターにつながった時から発生する。
電話仲介にもたもたしていると、ようやく相手につながるころには、電話代が高額になっていることもあるという(KDDIの料金表では、北朝鮮との国際通話は1分130円)。
北朝鮮の一般住民は基本的に国際電話不可
北朝鮮の一般住民が使用する電話回線は、国内通話のみに制限されている。
住民が所有している携帯電話も、国際電話からは遮断されているのだ。
家庭の固定回線から国際電話を行う場合には、政府からの特別な許可が必要。もし、許可なく国外に電話をかけたとなれば、処罰の対象となる。
だが、中朝国境付近で当局の監視をかいくぐり、中国の携帯電話と電波を使用した通話が行われているという情報もある。
中朝国境で行われている違法通話
前出の貿易関係者は、「中朝国境付近での中国の電波を使った違法通話は、昔から使用されていた方法です。まず、専門のブローカーを使って、中国の携帯電話を北朝鮮側に送る。北朝鮮住民は、中朝国境付近で中国の電波を使って、外部と通話するというものです」と明かす。
もちろん、北朝鮮当局もこの通話手段は把握しており、不審な電波を調べるなど国境の警備を強化しているという。
そのため、住民側は、通話を短時間にとどめ、通話中は場所を移動するなどして、取り締まりから逃れているとのことだ。
同関係者は、「北朝鮮住民側からは、韓国などにいる脱北した家族と連絡を取りたいなどといった理由から、違法通話に一定の需要があると聞いています。一方、北朝鮮当局としては、国内の情報が流出したり、逆に国外から余計な情報が入ったりしないように、違法通話には神経をとがらせているようです」と話す。
北朝鮮の国際電話の自由化の道のりは険しいようだ。
八島 有佑
@yashiima