死去前は安倍批判99%
大きな衝撃を与えた安倍晋三元首相の殺害から一夜が明けた。
この事件は、昨日昼前の発生時から中国でも大きく取り上げられていた。現時点でもSNS微博(ウェイボー)の784万PVで検索ランキング1位となっている。
しかし、投稿へのコメントを見てみると昨日から変化が見られる。これは中国政府の世論誘導目的の変化を意味している。
事件発生から安倍氏死去が正式に発表された日本時間午後6時頃までは、「7.7の恨みだ」「抗日の英雄」「靖国神社を忘れない」「死んで当然」など、上位表示の99%が不謹慎な批判で埋め尽くされていた。
7.7は、1937年7月7日に起きた(実際の発生は翌8日深夜)盧溝橋事件を指す。中国では盧溝橋事件を七七事変と日付で教育している。
世論形成する官製インフルエンサー
コメント主は個人アカウントになっているが、これは中国政府が世論誘導、形成を目的に政府の意向に沿ったコメントを書き込む、いわゆる官製インフルエンサーだと思われる。
官製インフルエンサーが言わば切り込み隊となり、世論へ着火して中国政府が誘導したい方向へ引っ張っていくSNS活用が今や常態化している。
昨日段階では、元首相を銃撃した人間を英雄や勇者とするコメントは、中国政府にとって都合が悪かったのだろう削除されたようだ。
安倍氏死去が正式に伝えられ、中国政府が哀悼の意を示し、中国外務省報道官が言及したことで、方針は少し変わったようだ。
本日確認すると、安倍批判の割合は半分以下となり、日本は危ない、治安に問題がある、安全に不安があるなど日本の治安、社会の不安定さへ言及するコメントが急増した。
それでも安倍氏を肯定するまで行かなくても追悼するコメントすらも引き続き削除対象となっている可能性がある。
中国最大のタブー
中国最大のタブー
一方、日本では、「殺害犯の動機は、特定の宗教団体への恨みだった」との供述が報じられ、宗教と政治の関係が注目されている。
しかし、中国では、この件に非常に神経質になり目を光らせているようだ。
なぜなら、中国政府が話題となることを最も嫌がる1つが宗教だから。つまり、中国最大のタブーの1つは宗教となる。
特定の宗教を信仰する人間からすると、中国は世界最大の宗教弾圧国だと認識されている。
事実、日本で宗教活動が認められているすべての新興宗教は、中国では布教活動が一切禁じられている。
より正確には、中国でもどんな新興宗教であっても個人で信仰するのは自由とされる。しかし、人に話すなども含めた布教活動を禁止している。
今回問題となっている宗教団体も中国では当然ながら禁止対象だ。
中国政府は、安倍氏が亡くなった今、安倍氏への個人批判よりも話題が宗教問題へ移行することを警戒して検閲を強化しているようだ。