2019年、反日教育の実態を暴露した高校生
6月2日にソウル市冠岳区の区議会議員選挙の開票が行われ、20歳の崔仁鎬(チェ・インホ)候補が当選した。
その若さには驚かされる。彼の名前を聞いて、さらに驚かされた韓国民も多かったことだろう。
今から3年前の2019年、崔氏は“時の人”となった。
当時は同区内の仁憲高校で学ぶ生徒だった。この高校の教師たちは、文在寅(ムン・ジェイン)政権の熱烈な支持者が多く、反日教育に熱心だったという。
校内行事で「安倍の自民党は滅びろ」といった反日スローガンを生徒に叫ばせ、文政権に批判的な生徒には、「お前は極右か!」と怒鳴って授業中に叱責することが日常茶飯事。
教師に逆らえば生活記録簿(日本の内申書に相当)に悪いことを書かれ、大学受験にも影響が出る。そのため、生徒たちは逆らえずにいたのだが。
生活記録簿の記載が終わった同年10月になると、催氏ら3年生が中心となり教師に反旗を翻した。ソウル教育庁に「教師たちが反日を強要している」と学校監査を要求。
また、反日教育の実態をユーチューブ動画やSNSで暴露して世間から注目された。
反日の嵐の中で偏向教育反対を叫ぶ
この事件が起きた2019年は、韓国社会全体が反日で盛り上がった年でもある。
7月に日本政府が半導体素材3品目の対韓輸出規制強化を実施したのをきっかけに、日本製品不買を訴える「NO JAPAN」運動が巻き起こった。
文政権も韓国民の反日が日本政府の圧力になると考えたのか、沈静化を図るどころか運動をあおるような言動が目立つ。
時の政権が黙認したこともあり、「日本に対しては何をやっても許される」といった空気が蔓延。そんな世の雰囲気に流されて、教師たちも悪乗りしたのだろうか。
しかし、生徒たちの行動が悪乗りする政権と世間に冷水を浴びせた。
文政権と対立する保守層には巻き返しの契機ともなる。学校側は、催氏らに懲戒処分を下すが、翌2020年1月にはソウル行政裁判所が処分を撤回させている。
その後、NO JAPAN運動は下火となり、反日をあおっていた文政権も退陣したことで、風向きは明らかに変わってきた。
今回の反日偏向教育を糾弾した催氏の区会議員当選もまた、反日の終焉を予感させる出来事だった。
が、韓国社会を悪乗りさせた要因は、まだ温存されたまま。日本人もそれを覚えておく必要がある。
反日の火種はくすぶり続ける
文政権以前から韓国の教育現場では反日傾向が強かった。
韓国には、全国教職員労働組合(全教組)という教員たちの労働組織があり、金大中(キム・デジュン)政権の1999年にこれを合法化している。もともと左派政権とのつながりが強く、北朝鮮との関係も深い組織だった。
全教組の結成宣言文には反日が謳われ、日本大使館前の慰安婦デモに生徒を連れて参加するなどこれまでも問題行動が目立った。
そんな組織に現在も教職員の約30%が加入しているのだから、文政権が退陣しても教育現場の反日傾向は変わらないだろう。
教科書にも問題がある。
韓国の歴史教科書は、その4割を近現代史に割いている。
日韓併合期の35年間についてはとくに詳しく書かれているのだが、日本統治はすべて「悪」とする内容には、史実と違った点が多いところが多く見受けられる。
最近よく言われる「日韓の歴史認識の違い」は、教科書の影響は多分にある。しかし、保守政権の時代にもそれは放置されてきた。
韓国の新政権は、反日から融和への転換を目指しているという。
「日韓新時代」それを実現するには、まず、今も温存され続けている反日偏向教育の根を断たねばならない。
青山 誠(あおやま まこと)
日本や近隣アジアの近代・現代史が得意分野。著書に『浪花千栄子』(角川文庫)、『太平洋戦争の収支決算報告』(彩図社)、『江戸三〇〇藩城下町をゆく』(双葉社新書)、近著『日韓併合の収支決算報告~〝投資と回収〟から見た「植民地・朝鮮」~』(彩図社、2021年)。「さんたつ by 散歩の達人」で連載中。