「武器輸出3原則」が邪魔する日本

「武器輸出3原則」が邪魔する日本

2022年1月15日からUAEを訪問した文在寅氏 出典 文在寅政府大統領府公式ツイッター

 ロシアのウクライナ侵攻や中国の海洋進出などによって、どこの国も領土防衛に対する意識が高まっている。

 そのため、兵器需要も旺盛。ビジネスチャンスを逃すまいと、韓国は熱心なセールスを展開し、そのかいあって輸出額が急増しているようだ。

 韓国では、90年代から積極的に兵器輸出を行うようなり、政府もこれを全力でサポートしている。日本の防衛関連企業からすれば、なんともうらやましい状況…。

 日本も近年は兵器輸出への関心が高まっている。が、長らく堅持してきた「武器輸出3原則」が邪魔をする。

 これは、共産圏や紛争地域への武器輸出を禁じ、その他の国々への輸出も「慎む」とするもの。

 最近は見直しを求める声も大きくはなっているのだが、批判を意識して政府が動けないことがよくある。

この数年間で兵器輸出額は倍増

この数年間で兵器輸出額は倍増

オーストラリアと約7億ドルの大型契約を結んだK-9自走砲 出典 대한민국 국군 Republic of Korea Armed Forces [Public domain], via Wikimedia Commons

 2018年の時点で、韓国の兵器・軍需物資輸出額は約52億ドル(約6800億円)だった。

 それが今年に入って早々、アラブ首長国連邦(UAE)への迎撃ミサイル「天弓-Ⅱ」の輸出契約がまとまる。

 10年で総額35億ドル(約4580億円)にもなり、単独兵器の輸出としては韓国史上最大の額だという。

 この他にも昨年末には、オーストラリアとの間でも約7億ドル(約916億円)にもなるK-9自走砲の輸出が決定するなど大型契約を次々に成立させた。

 当然、輸出額は急増。2020年には当初の予想額50億ドル(約6540億円)を大きく上回り、約70億ドル(約9160億円)に達した。

 これは国別順位で第6位、アジアの国では8位の中国を抜いてトップの成績。今年度は100億ドル(約1兆3000億円)を突破すると見込まれており、もはや武器輸出大国と言えるレベルだろうか。

 しかし、兵器の販路拡大にはやる韓国のやり方には、節操がないという批判もある。

 たとえば、2019年には、韓国企業がイランやシリア、パキスタンなどに生物・化学兵器に転用可能な物質を不正輸出していた事実が明るみになって問題化したことがある。

 これは日本が韓国をホワイト国から除外した理由について、日本側から「輸出管理上の不適切な事案がある」との指摘があり、韓国政府が調査して判明したものだ。

兵器の売り方は韓国に学べ!?

 商売熱心なあまりルールを逸脱してしまう。とはいえ、日本にとって見習うべき点も多いにありそうだ。

 これまで武器輸出3原則に縛られて輸出のできない日本製兵器は、販路を自衛隊に限られた。

 そのため、少量生産で高額化し、防衛予算を圧迫する。自衛隊に十分な装備を行き渡らせ防衛力を高めるためには、兵器の量産と販路の拡大を図ることは必定だ。

 安倍政権の頃には、武器輸出3原則を見直して、オーストラリアへの潜水艦輸出を試みたことがある。

 しかし、フランスとの受注競争に敗れて輸出は実現せず。また、日本には、飛行艇US-2やP-2哨戒機など世界最高の性能と折り紙付きの兵器があり、インドやニュージーランドなどこれに注目する国も多かった。が、いずれも契約にこぎつけるまでには至っていない。

 日本政府や企業の経験不足に加えて「技術ではどこにも負けてない」という自負心が邪魔をしているようでもある。

 技術力に慢心して、セールスや必要な根回しがおろそかになる。

 高い技術にあぐらをかいて「いいモノなら必ず売れる」と、必要な根回しを怠りセールスにも積極性を欠く。職人気質の悪癖だろうか。

 韓国製兵器の技術的評価は、さほど高いものではないという。それでもこの数年で販売額が2倍にも伸びているのだから、日本はそこから学ぶべきだろう。

青山 誠(あおやま まこと)
日本や近隣アジアの近代・現代史が得意分野。著書に『浪花千栄子』(角川文庫)、『太平洋戦争の収支決算報告』(彩図社)、『江戸三〇〇藩城下町をゆく』(双葉社新書)、近著『日韓併合の収支決算報告~〝投資と回収〟から見た「植民地・朝鮮」~』(彩図社、2021年)。「さんたつ by 散歩の達人」で連載中。 

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