2020年2月以降で中朝貿易が最高額

2020年2月以降で中朝貿易が最高額

5月17日、朝鮮労働党の政治局会議に出席した金正恩総書記(提供 コリアメディア)

 中国税関総署の貿易統計によると、4月の北朝鮮と中国の貿易額は、1億234万ドル(約130億円)であった。

 北朝鮮が国境管理を厳格化した2020年2月以降の約2年間で、最高額となった。

 中国からの輸入額は9810万ドル(約125億円)で、医薬品や農業資材、コメなどの必要物資を調達している。

 一方、中国への輸出額はわずか400万ドル(約5億円)しかなく、貿易収支は9400万ドル(約120億円)の輸入超過。

 輸入額、輸入超過額ともに、過去2年で最高額である。

 北朝鮮は、今年1月に陸路貿易を再開して以降、物資不足解消のために輸入を拡大させてきた。

 ところが、陸路貿易は4月末に再度中断し、北朝鮮国内で新型コロナウイルス感染が疑われる発熱者が増加していることから、貿易再開の見通しは立っていない。そのため、5月の中朝貿易は、再び縮小に転じるものと予想される。

田植え用の資材やコメ700トンを輸入

 中国からの輸入品の内訳を見ると、肥料や除草剤、プラスチックフィルム、タイヤなどの農業資材を調達している。

 これらは、田植えなどの農業に必要な物資で、中国からの輸入に頼ってきたものである。労働新聞によると、5月初旬から田植えが始まっており、現在も防疫体制の中で、田植えは行われている。

 また、食料品を各種輸入する中、前月の3月(180トン)から約4倍となる700トン超のコメを輸入した。

 コメの輸入は、2020年1月に1325トンを中国から輸入したのを最後に中断していたが、今年3月に輸入が復活していた。

 ただ、北朝鮮はコロナ禍前までは、年間10万トン以上のコメを中国から輸入していたことから、必要量を満たしていないとも考えられる。

4か月で1650万ドルの医薬品輸入も供給不足が深刻

 北朝鮮で発熱者が増加している中、注目が寄せられるのは、医療用品の輸入である。

 4月は医療用品を400万ドル(約5億円)超を輸入しており、このうち、ほぼすべてが医薬品であった。

 北朝鮮は、今年1月から4月までの4か月間で、合計1650万ドル(約20億円)規模の医療用品を中国から輸入しているが、現在のコロナ感染拡大に対処するには十分ではないようだ。

 金正恩(キム・ジョンウン)総書記が、「医薬品が円滑に人民に供給されていない」と言及したように、医薬品不足はかなり深刻と言える。

 19日の労働新聞では、正恩氏や党幹部らが、自宅の常備薬を人民に配ったことが伝えられている。

 韓国の聯合ニュースは5月17日、「北朝鮮が、航空機3機で中国から大量の医薬品を輸送した」と報じているが、5月は陸路貿易がストップして医薬品を輸入できていないことを踏まえると、十分量とは言えないだろう。

 医薬品や医療機器の不足分をどのように解消するのか、関心が寄せられる。

八島 有佑
@yashiima

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