2012年に結婚した12歳差のカップル

2012年に結婚した12歳差のカップル

関心爆発中の金建希夫人と朴槿恵元大統領 出典 KOREA_The_20th_President_Inauguration_Ceremony_550 / koreanet

 韓国の新大統領に尹錫悦(ユン・ソンニョル)氏が就任して、1か月も経っていないが、閣僚人事などでつまずき、支持率は50%台を行き来している。

 一方で「大統領より人気」と言われているのが、尹氏の夫人、金建希(キム・ゴンヒ、原音はゴニが近い)さんだ。インターネット上のファンクラブには1日平均千人が加入し、10万人に迫る勢いだ。

 外部への露出は多くないが、その分、熱い注目が集まっており、身につけているものがすべて爆売れするなど、異様な人気ぶりとなっている。

 意外と性格は男勝り。政治にも関心を持っており、尹大統領の政策にも影響を与えているのではないかという見方がもっぱらだ。

最初は不祥事報道の洗礼

 文化・芸術コンテンツを制作・投資する会社「コバナコンテンツ」の幹部を務めていた2012年、検事だった尹氏と結婚した。本人は39歳、夫は51歳の年の差カップルだった。

 メディアに本格的に登場したのは昨年だ。夫が検事総長を辞任し、文在寅(ムン・ジェイン)大統領に対抗して、大統領選への出馬を表明したからだ。

 韓国では、大統領候補の家族も徹底的に検証される。

 金建希さんも学歴詐称や論文の無断引用がメディアで相次いで指摘され、昨年末に謝罪会見に追い込まれた。

 これ以外にも株価操作に関与した疑惑や男性を相手にするホテル内の飲食店で「ジュリ」という名で働いていたとの報道も繰り返された。

 この店で、ジュリと会ったと主張する男性が、「間違いない。ジュリは金建希さん」と証言し、報道が過熱したこともあった。

小気味いい政治家批判に注目

 これらの疑惑はまもなく立ち消えになったが、大問題となったのは、金建希さんが進歩志向のインターネットメディアの男性記者との間で交わしていた8時間近い通話内容の一部が韓国の地上波テレビで放送されたことだ。

 普通ならアウトだが、この中で金建希さんが、有名な政治家を小気味よく批判していたことで共感が広がり、むしろ人気が跳ね上がり、ネット上でファンクラブができた。

 大統領選では、応援演説のようなことはしなかったが、夫が大統領当選後には、ファーストレディとして活動している。

 大きな話題となったのは、大統領に就任した日の夕食会だった。

 気分良くワインのグラスを手にして、白ワインを口にした夫に、金建希さんが「レーザー視線」(韓国メディア)を送ったため、尹大統領は、すぐにグラスを置いた。

 この映像がネット経由で拡散し「妻の顔色をうかがう様子が微笑ましい」「目線が怖い」といった反応が飛び交った。

身につけているものは何でも売れる

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1万2000人参加しているフェイスブックのファンページ

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 選挙期間中に、メディアの集中砲火を浴びたこともあり、本人は「静かな内助に努めたい」と話している。

 また、文在寅前大統領の夫人は、公費で高価なブランド衣服を着用し、批判を浴びた。金建希さんは、すべて自費で購入すると表明している。

 自費購入だけに金建希さんが着けている眼鏡、靴、スカートなどは高価ではない。しかし、原色を大胆に組み合わせた着こなしが話題を呼ぶ。たちまちブランドや購入した店が割り出され、客が殺到している。

 大統領就任直後の14日には夫婦で、自宅近くの百貨店にお忍びで立ち寄って、「バイネル」ブランドの靴を購入した。

 このブランドは、元々イタリア発だが、本社が経営危機に陥ったため、2011年に韓国資本が買収した経緯がある。

 この靴を選んだのは、夫の好みをよく知る金建希夫人だった。装飾のないシンプルな靴で価格は30%割引を受け、約2万円。これまでの靴は3年履いていたという。

 大統領夫妻が立ち去った後、買い物をする様子がネットで拡散し、店には客が押し寄せ、ホームページにはアクセスが集中し、ほとんどの商品が売れてしまったという。

 ファンクラブは、金建希さんの写真を使ったマグカップや、マスクなどの販売を行っているほか、政治活動にも乗り出している。

 韓国では、6月1日投開票の統一地方選挙と国会議員の補欠選挙が行われるが、ファンクラブ内では、尹大統領の与党を応援しようとの呼びかけを行っている。

 人気が今ひとつの尹大統領にとって、大きな追い風になるかもしれない。


방송에선 볼 수 없었던 윤 대통령 취임 축하연 명장면!

 アイキャッチの「レーザー視線」は14秒と3分20秒頃に登場する。

五味 洋治(ごみ ようじ)
1958年長野県生まれ。83年東京新聞(中日新聞東京本社)入社、政治部などを経て97年、韓国延世大学語学留学。99~2002年ソウル支局、03~06年中国総局勤務。08~09年、フルブライト交換留学生として米ジョージタウン大に客員研究員として在籍。現在、論説委員。著書に『朝鮮戦争は、なぜ終わらないか』(創元社、2017年)、『金正恩 狂気と孤独の独裁者のすべて』(文藝春秋、2018年)、『新型コロナ感染爆発と隠された中国の罪』(宝島社、2020年・高橋洋一らと共著)など、近著『金正恩が表舞台から消える日: 北朝鮮 水面下の権力闘争』(平凡社、2021年)。
@speed011

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