2票で大惨敗(4人中最下位)
康京和(カン・ギョンファ)氏は文在寅(ムン・ジェイン)政権で3年以上も外相を務めた人物。
国連理事会で慰安婦問題は未解決という認識を示すなど、日本側の反発を招く言動も目立つ。日本人には、文政権の対日強硬路線を象徴とも映っていたかもしれない。
昨年2月に外相を辞任してからは、しばらく表舞台からは姿を消していたようだが、最近になって久しぶりにその名をテレビや新聞で見かけるようになった。
彼女は今年3月25日に実施された国際労働機関 (ILO)事務局長選挙に立候補していたのである。
「先進国」「一流国」という言葉が大好きなお国柄。日本とは違って、国際機関のトップに就任することは国民の大きな関心事になる。
「初の女性事務局長誕生か?」
と、新聞もこれを大きく取り上げていた。実績や知名度から韓国内では「当選確実」と期待していたが、結果は決選投票で最下位だった。
56か国が参加した選挙でアフリカ・トーゴ出身のジルベール・ウングホ氏が過半数の30票を獲得して当選。2位はフランス代表の23票。韓国期待の…康京和氏の得票は、わずか2票だった。
BBCの放送で世界に恥をさらす
「惜しくも落選」
などという報道が韓国内ではされていたが、全然惜しくない。惨敗である。
「アフリカの組織票にやられた」
とか、恨み言たらたらのマスコミ報道にも、悔しさがにじみ出ている。
確かに、アフリカの組織票はあるかもしれない。しかし、2位フランス代表との10倍以上の得票差はどうか。
やはり、彼女の能力に疑問符を持つ国が多かったのではないか。そう思える。外相時代には色々やらかしているだけに。
たとえば、2019年に英国BBCの番組で日韓対立について対談した時には、韓国の一般国民のレベルで感情論を語る彼女に、コメンテーターは、あきれた感じで国際法について説明しながら論破していた。
第3者の他国民が見ても「赤っ恥かいた」感は否めない。この放送を記憶している者には、「とても国際機関の長を任せられる人物ではない」と判断されても仕方ないだろう。
特殊な考えに凝り固まった市民団体代表。そのあたりがお似合いか、と。
もし当選していたら韓国は苦境に陥ったかも!?
ここでILOについても少し説明しておこう。
この機関は戦前の国際連盟時代に創設され、国際連合に継承された最も歴史の古い国際機関の1つである。
スイスのジュネーブに本部があり、現在は187か国が加盟し、労働者の適正な労働条件が守られることに目を光らせている。
「強制労働の撤廃」「児童労働の廃止」などにも力を入れているという…。ああ、やはり、ここで気になるキーワードが出てきた。日韓が対立する徴用工問題でもよく出てくる言葉ではある。
彼女がトップに就任したあかつきには、ILOを動かし国際舞台で過去の日本の悪行を糾弾する。そんなシナリオが見えてくる。落選によって絵に描いた餅に終わったが。
だが実は、韓国にとっても落選は結果的には良かったのではないか。
2010年代あたりから国際人権団体のアムネスティ・インターナショナルが、韓国の農場で外国人労働者に対する虐待や搾取がまん延していると度々警告を発している。
さらには、韓国は労働災害の発生件数でも世界有数であり、建設現場などの安全に関して他国は不安視している。
労働者を守る組織のトップを排出する国がこれではまずい。
日本の過去を攻撃する前に「議長の国こそ、どうなんですか?」と、韓国の現状に強い批判が起こりそうな。藪ヘビをつついてしまう可能性が否めない。
青山 誠(あおやま まこと)
日本や近隣アジアの近代・現代史が得意分野。著書に『浪花千栄子』(角川文庫)、『太平洋戦争の収支決算報告』(彩図社)、『江戸三〇〇藩城下町をゆく』(双葉社新書)、近著『日韓併合の収支決算報告~〝投資と回収〟から見た「植民地・朝鮮」~』(彩図社、2021年)。「さんたつ by 散歩の達人」で連載中。