第4の権力が機能しない中国
高須クリニックの高須克弥院長を始め多くの著名人らのSNS上での呼びかけもあり、大幅に台湾パイナップルの輸入量が増えた日本。
台湾の公式統計を見ると、2021年台湾パインの中国への輸出は12.9%、香港22.1%の半分ほどだったようだ。
中国政府は、昨年3月1日から台湾パイナップルを禁輸したはずだったが、どうして、12.9%も輸出されたのだろうか。
台湾パイナップルの出荷シーズンは3月からのようだが、統計には1~2月の出荷も輸出量は少ないが載っている。そうすると、禁輸前に輸出した分だったとも考えられる。
現時点で、中国国営や中国共産党系のメディアを調べる限りは、台湾パインを解禁したとの記事は見つけられない。それどころか、言及している記事もない。
これが日本など報道の自由が保証されている民主主義国家だと、政府が隠しても第4の権力とも呼ばれるマスメディアが政府が隠している情報などを暴き出すように報じて追求することが起こるのであるが、中国は、その権力が機能しない。
台湾パイン禁輸しても中国人が反発しない理由
そもそも、中国が台湾パイナップルを害虫を理由に一方的に禁止した理由は、禁止しても国内の中国人からの反発が起こらないという計算が働いていたとみられる。
実は、中国は世界有数のパイナップル生産地だったりする。
2018年のFAOSTAT(国際連合食糧農業機関のデータベース)によると、中国は、世界5位の172万7607トン、全世界でのパイナップル生産量の6.13%相当を生産している。
ちなみに台湾は、18位の43万1084トン、1.53%となる。
つまり、中国は、台湾からパイナップルを輸入しなくても味はともかく、国内産や足りなければ、台湾以外の国から輸入すれば、十分に国内需要は満たすことができるのだ。
だから、禁輸を政治利用できたのだろう。中国人から「パイナップル食わせろ」的な反発も起こらないと考えたと想像できる。
中国は、中国共産党にとって都合の悪いことを徹底的にスルーする。言及もさせない情報統制を強いるのは日常茶飯事のこと。
産地偽装で政府と中国人ウインウイン?
2021年、人口約700万人の香港は、人口で約17倍多い日本の3分の1の量の台湾パイナップルが輸入している。
普通に考えれば、香港で消費しきれず、香港を入り口に中国大陸へ輸送されて販売されたと考えるのが自然だろう。
今現在でも中国の淘宝網(タオバオ)でパイナップルを探すも、台湾からの輸入パイナップルは確認できない。産地は、海南島や広東省、浙江省など中国国内と表示されている。
偽物が、いまだ常態化している中国は、タオバオなどECサイトでの偽物対策が日本以上に厳しい。
しかし、果物など食品の産地偽装については、どうなのだろうか。あまり厳しいとは、耳にしたことがない。
香港へ輸入された台湾パイナップルを本土へ運び、中国産パイナップルとして販売したとしても、それをわかって買う庶民もわざわざ中国政府へ苦情など訴えずに、台湾パイナップルを堪能していそうだ。
これなら禁輸を断行した中国政府のメンツも保てウインウインとなる。