ロックダウン前から1日1回のPCR検査を実施していた深セン
香港と隣接する中国広東省深センが14日から事実上の都市封鎖(ロックダウン)に入った。
当然理由は、新型コロナウイルスの感染者増加となるのであるが、深セン市が発表している統計では、1月から3月13日までの累計感染者数512人だった。
多くの日本人からすると、この人数でロックダウンに驚くのではないだろうか。
中国は症状が確認された場合のみを確定症状者=感染者とし、PCR検査で陽性になるも無症状者は、無症状感染者として別扱いでカウントされている。
日本では、中国が定義するところの確定症状者と無症状感染者を合わせた人数を感染者数として発表している。
中国の新型コロナの感染状況を伝えるKWTの記事では、新規感染者=症状ありの確定症状者。新規陽性者=症状がない無症状感染者と表記させてもらう。
中国当局発表による中国本土での16日の新規感染者は1226人。最も多いのは吉林省吉林市の455人。深セン市は71人。中国の定義で感染者にカウントしない新規陽性者は1206人。こちらも最多は吉林市で400人。深セン市は20人だった。
深センはロックダウン前から全住民対象に1日1回のPCR検査が実施されていた。
スマホ未所持の5歳児がPCR検査を受けなかったら
深センに5歳の男児と3人で暮らす中国人のRさん夫婦が、ロックダウン直前の検査状況を話してくれた。
「PCR検査を受けるのに2、3時間待ちだったので、子供は待てないと思い先に帰宅させて、夫婦2人だけでPCR検査の列に並び検査を受けました。私たちは、スマホの健康アプリで把握されていますが、スマホを持っていない子供は大丈夫だと思ったからです。ところが、その日の夜中11時過ぎに公安が尋ねてきて、『子供が今日の検査を受けていないから今すぐに受けさせるように』と言ってきました。子供はもう寝ていましたので、『明日の朝一番で行きます』と伝えるも、『私たちも受けてもらえないと帰れないのです』と困り顔。しかたなく、ご機嫌斜めの息子を起こして、深夜にPCR検査を受けに行きました」
公安の対応は威圧的ではなく、終始丁寧な口調だったそうだが、来たのが公安。ということは、日本だと警察が深夜に「PCR検査を受けろ。受けるまで帰らない」と言ってきたということだ。
アナログとデジタルの混合監視
それにしても、Rさんの5歳の子供がPCR検査を受けていなかった情報は、どこに紐付いていたのだろうか。
Rさん夫妻の健康QRコード(アプリ)と紐付いていたのかもしれないし、子供の身分証明証に直で紐付いているとも考えられる。
中国政府が、アナログとデジタルを強力に組み合わせたシステム下で中国人を監視している現状がよくわかる。
深センのロックダウンは20日まで継続予定で、Rさんのスマートフォンに送られた説明には、
・食料品の購入とPCR検査以外の不要不急の外出禁止。
・期間中7回のPCR検査を受けること。
・外出時はマスク着用必須で、集会などの集まりは一切禁止。
・社会秩序を乱した者は厳正に処罰する。
と書かれている。
買い物に行けるのは社区(小区とも)と呼ばれるマンションの敷地内のみで、社区は鉄柵や壁に囲まれていて、数箇所ある入口は閉じられている。
日本だと中庭のようなイメージだが、封じ込められるように設計されている。
多くの都市であれば、社区内に商店があるので、そこで買い物するか、宅配サービスをキャッシュレス注文し、社区内の指定場所へ置いてもらい、住人はそれを受け取る。そんな生活が20日まで続くようだ。