北朝鮮が次期韓国大統領を非難
3月9日の投開票で次期韓国大統領に決定した保守系野党「国民の力」の尹錫悦(ユン・ソクヨル)氏に対して、北朝鮮メディアがさっそく非難を浴びせている。
北朝鮮が今回の韓国大統領選挙の結果を初めて伝えたのは、11日の国営メディア・朝鮮中央通信であったが、尹錫悦候補が勝利したことを短く報じただけで、その際には論評はなかった。
そのため、次期政権について、北朝鮮がどのような反応を見せるか、注目が寄せられていた。
韓国を「親日勢力」と「反日勢力」に区別
3月12日、北朝鮮政府系の対外宣伝メディア「統一のこだま」は、「至急に清算すべき親日勢力」と題する論評を掲載し、日韓関係の改善を目指す尹錫悦氏に対して、非難を寄せた。
論評は、「南朝鮮(韓国)で親日勢力が、反日運動を萎縮させるために卑劣な謀略策動を執拗に行っている」という指摘から始まる。
「親日勢力」とは、日韓関係改善を目指す尹錫悦氏や、次期政権で与党となる国民の力など保守政党のことを指している。
これに対抗するものとして、「反日勢力」を位置付け、「反日勢力が親日勢力を排除しなければなければならないと激怒しているのは、あまりにも当然である」と述べるなど、反日勢力を支持した。
北朝鮮が親日勢力の拡大に警戒
論評では、親日勢力である国民の力など保守党が、「機会があるたびに韓日関係悪化の責任は、政治外交的に無能な現政権にあるとして、各階層の反日意識を弱めようと画策している」と指摘。
また、尹錫悦氏が、今年2月の討論会で、「朝鮮半島有事の際、自衛隊が半島に入ってくることはあり得るかもしれない」と発言したことに対しても、「妄言」と非難している。
「南朝鮮が、親日勢力が活気づく世の中になれば、日本反動は過去に日本軍性奴隷犯罪に対する謝罪や賠償どころか、歴史歪曲策動や独島(日本名・竹島)強奪野望などの軍国主義の復活策動をさらに露骨化させるだろう」と述べ、親日勢力が日本の軍国主義復活と結びつくと警告した。
最後には、「南朝鮮で親日勢力を緊急に清算する必要性をさらに浮き彫りにしている」と記して、親日勢力の拡大を止めるように、反日勢力に対して呼びかけている。
「過去清算」なき日韓関係改善に警戒
統一のこだまの論評が出る前日(11日)、岸田文雄首相と尹錫悦氏による電話会談が行われている。
会談後、日韓首脳は、「核・ミサイル問題や拉致問題を含む北朝鮮への対応についても緊密に連携していく」ことで一致したと発表。
また、選挙期間中から日韓関係重視を表明していた尹錫悦氏は、「韓日関係を重視しており、関係改善に向けてともに協力していきたい」との意向を示している。
歴代最悪の状態であった日韓関係が動きを見せているが、韓国とともに日本に対して「過去清算」を求めてきた北朝鮮としては、看過できないことだろう。
もし、韓国が、過去清算を要求せずに日韓関係が改善しようとすれば、北朝鮮は、今後も新政権を糾弾していくものとみられる。
八島 有佑
@yashiima