外国人労働者が増えることで起こる問題
インターネットによって世界が小さくなり、また、格安航空会社の登場で、これまで海外に出たことのなかった収入層の人々が外国に活路を見出し、自国から出て働くということが当たり前になりつつある。
日本も多くの業種で外国人の労働力をあてにするようになっているが、それはどの国でも同じである。
国際的な経済水準では、まだ低めの東南アジアでも、それが当たり前になっている今、日本や韓国で外国人に頼る業種があることは当然だ。
一方で、外国人労働者が増えることで問題も発生する。
異文化で育った人々は、保守的な日本の地域社会になじめず、一見目立った行動を取ってしまう。
特に外国人労働者が必要な地方都市などでは、より外国人の存在が前面に出てきて、同時に同じ国の人々がコミュニティを形成しやすい。場合によっては、それが地域社会との軋轢(あつれき)を生じさせ、治安の悪化を招くケースもある。
国籍別では日本と違う結果に
韓国においても、また外国人犯罪が増加し、ときに地元メディアにも取り上げられる。
統計サイト「statista」で閲覧できる数値によれば、2020年に韓国国内で検挙された外国人の国籍別上位5か国は下記のようになる。
韓国国内の国籍別外国人犯罪者数
1:中国 17,116人
2:タイ 2,995人
3:ベトナム 2,764人
4:ウズベキスタン 1,863人
5:米国 1,494人
全外国人犯罪者のうち50%近くを中国人が占める。
隣国との距離感や経済的なつながり、政府の外国人受け入れ体制の違いなどから、日本とは違った順位になっていることに気づくだろうか。
同年の日本国内における国籍別の統計は「警察白書」から確認できる。上位5か国は下記になる。
日本国内における外国人犯罪者の国籍別割合
1:ベトナム 35.9%(約4,220人)
2:中国 23%(約2,704人)
3:フィリピン 6.5%(約764人)
4:ブラジル 4.3%(約506人)
5:タイ 4.1%(約482人)
※カッコ内の人数は、令和2年度の外国人逮捕者数1万1756人から割り出している。
ベトナム人の犯罪増加と技能実習生の関係
かつては日本も韓国同様、中国人の犯罪が多かった。現在は、日本政府が技能実習生としてベトナムから多くの労働者を受け入れているため、ベトナム人長期滞在者が増加。これに伴い、ベトナム人の犯罪も増加しているとみられる。
ベトナム人の場合、特に顕著なのが万引きだ。外国人万引き犯検挙件数の実に60.5%がベトナム人になる。
日本国内に暮らすベトナム人の多くがまじめに働き、まじめに生活している。
東京都内では、コンビニエンスストアの深夜従業員は、多くがベトナム人という印象もあるほどだ。
ベトナムから受け入れる際も、現地で面接が行われた上で日本に送り込まれるわけだが、大半はしっかりとした業者で、ベトナム人もちゃんとした雇用契約の下で来日している。
しかし、一方で日本の反社会的勢力の息がかかった企業などが、現地で人材派遣会社を設立し、保証金と称してベトナム人の平均年収を大きく上回る額を払わせた上で来日させていることもある。
日本国内の受け入れ企業は、低賃金でベトナム人をこき使う。雇用契約前に退職すると保証金は返ってこない。そのため、ベトナムにも帰れず、日本での収入も途絶えてしまったベトナム人の一部が罪を犯しているとみられる。
多くの人材派遣会社は、正当に事業を進めており、また、日本人経営のしっかりしたところもある。
ほんの一部の悪徳業者によって日本の治安にまで影響を及ぼしているのである。
高田 胤臣(たかだ たねおみ)
タイ在住ライター。2002年から現在にいたるまでバンコクで過ごしている。『バンコクアソビ』(イースト・プレス・2018年)、『バンコク 裏の歩き方【2019-20年度版】』(彩図社、2019年・皿井タレー共書)、『ベトナム裏の歩き方』(彩図社、2019年)など、近著『亜細亜熱帯怪談』(晶文社、2019年・監修丸山ゴンザレス)。
@NatureNENEAM
在住歴20年が話したい本当のタイと見てきたこととうまい話と(note)