韓国の2022年GDP予測値が日本を下回る
1月16日に日本銀行が公表した「経済・物価情勢の展望」では、今年の国内総生産(GDP)成長率は3.8%になる見通しだという。
昨年7月には2.2%の予測だったが、そこからかなり上方修正されている。
また、韓国の中央銀行である韓国銀行でも日本と同様に経済成長率の予測を立てている。それによれば、最も新しい昨年11月に公表された数値は3.0%と日本より低い。
あくまでも予測値ではあるが、それでも近年では、韓国の数値が日本を下回ることはなかった。
もしも、これが現実のものとなれば、政権がひっくり返るような騒ぎになるだろう。
2027年に日韓の経済力は逆転する!?
1980年以降、韓国の経済成長率が日本を下回ったのは、アジア通貨危機でデフォルト寸前の状況に追い込まれた1997年の1度だけ。
その後は、常に日本を上回る成長を続け、現在は日本の国民1人あたりGDP3万9890ドルに対して、韓国は3万1954ドルと、その背中が間近に見えてきている。
日本経済研究センターが、昨年12月に発表した経済成長の見通しでは、2027年に国民1人あたりのGDPで日本は韓国に追い抜かれるという。
このニュースは、韓国の新聞やテレビでも大きく報じられている。
いつもなら大喜びしそうな話だが…、なぜかこの件に関しては、あまり話題にもならなかった。
この予測は、今後のGDP平均伸び率を日本が2%、韓国を6%として試算したものだ。
しかし、韓国では、2010年に6.81%の経済成長を記録して以降、6%台に到達したことがない。
この10年は2~3%程度の成長率で推移し続け、2020年は世界的パンデミックの影響で日本と同様にマイナス成長。翌年の2021年には、その反動で4.28%上昇しているが、今年もその流れが続くとは思えない。
成長を不安視させる材料が多すぎる。「日本を追い抜く条件である6%の成長率が達成できるか?」韓国民もそれには懐疑的なようだ。
だから、話題にならなかったのだろう。
日本のバブル期に似ている
また、最近の韓国人は、経済成長率よりも、土地価格のほうがよほど気になるようだ。
文在寅(ムン・ジェイン)政権が発足してから不動産への投機がブームとなり、地価は2倍近くも高騰している。
ソウル首都圏では、もはや庶民が家やマンションを購入するのは不可能。と、日本が80年代に経験したバブル期に似た状況になっている。
韓国では、これを日本のバブル期と重ね合わせて考える者が多く、いずれ同じ道を歩むのではと恐れている。
日本のバブル景気は、プラザ合意後の低金利政策を引き金に始まった。その後、過剰な投資熱を冷まそうと、1990年に日本政府が融資総量規制を発表。
融資の条件を厳しくすることで、土地取引を抑制しようとしたのだが…。薬が効きすぎた。不動産取引が停滞し、土地価格は一気に大暴落。こうして、バブル景気は終焉した。
その後の日本がどうなったかといえば「失われた20年」と言われる長い低迷期に入り、いまだそこから脱却できずにいる。
日本のGDPを気にしている場合ではない
韓国もまたあの時の日本と同様に金利を引き上げて融資の規制を始めている。
影響は少しずつ現れ、昨年夏頃からソウル首都圏の不動産取引は減少傾向に。それでも以前から建設していたマンションが続々と完成し、需要と供給のバランスが崩れつつある。
このままでは、不動産価格が暴落することは必至。
また、韓国は家計負債が多いことでも知られるが、これが昨年末にGDPの103.8%にまで増えている。その60%は住宅担保融資によるものだ。
不動産バブルが崩壊して担保の資産価値が失われると、金融機関が次々に破綻する。
そうなると、韓国経済は危機的状況に陥るだろう。日本のGDPを気にしている場合ではない。
青山 誠(あおやま まこと)
日本や近隣アジアの近代・現代史が得意分野。著書に『浪花千栄子』(角川文庫)、『太平洋戦争の収支決算報告』(彩図社)、『江戸三〇〇藩城下町をゆく』(双葉社新書)、近著『日韓併合の収支決算報告~〝投資と回収〟から見た「植民地・朝鮮」~』(彩図社、2021年)。