なぜか韓国が新駐日米国大使に関心を示す

なぜか韓国が新駐日米国大使に関心を示す

岸信夫防衛大臣と会談するラーム・エマニュエル駐日米国大使 出典 ラーム・エマニュエル駐日米国大使公式ツイッター

 1月23日にラーム・エマニュエル駐日米国大使が日本に赴任した。

 コロナウイルス感染拡大の影響もあり、華々しいセレモニーはなかった。そのため、日本国内では、あまり話題にならなかった。

 しかし、なぜか韓国の新聞各紙は大きく報じ、他国に赴任した大使に異様な関心を示している。

 エマニュエル新大使は、クリントン政権で大統領上級顧問、オバマ政権では大統領主席補佐官などを歴任し、2011年から8年間はシカゴ市長を務めたという経歴の持主。

 バイデン現大統領とも、オバマ政権時代は副大統領として長らく一緒に仕事をした仲。両者の関係は親密で「バイデンの側近」などと書かれた新聞や雑誌の記事もよく目にする。

 “何事も日本より上”でなければ気がすまない韓国政府関係者や韓国民からすると、そういった新駐日大使の経歴が気になっているようだ。

 それもあってか、駐韓米国大使には、エマニュエル氏よりも“格上”の人物を望む声が高いという。

日系人人種差別にうんざりした前任大使

日系人人種差別にうんざりした前任大使

口ひげまで攻撃されたハリー・ハリス前駐韓米国大使 出典 U.S. Department of State [Public domain], via Wikimedia Commons

日系人人種差別にうんざりした前任大使

 しかし、考えてみると、駐韓米国大使はもう1年以上も不在のまま空席になっている。これは同盟国としては異常事態と言えるだろう。

 昨年1月20日に韓国駐在米国大使のハリー・ハリス氏が退任して帰国して以来、後任がいまだ決まっていないのだ。

 ハリス氏は生粋の海軍軍人。アジア系米国人として初の海軍大将の地位にまで上り詰めた人物だ。

 米国太平洋艦隊司令官も経験している。韓国が求める大使としての“格”を十分に満足させる経歴だが。彼の母親は日本人。生まれ育ったのも横須賀の海軍基地。それが癪(しゃく)に障る韓国人は多かった。

 「侮辱」と捉える韓国紙の報道も多く見られ、ハリス氏の口ひげまで「日本統治時代の朝鮮総督を見ているようで不快だ」という批判まであった。

 また、日韓秘密軍事情報保護協定(GSOMIA)を破棄しようとする韓国政府に対して、ハリス氏が米国政府を代表して失望の念を表明した時も、市民団体や与党議員から口汚く糾弾する声が上がる。

 良い思い出などあるはずもない。離任直前にハリス氏が外国紙のインタビューを受けた時にも、自分の「日本人の血」に対して韓国側から執拗に人種攻撃されたことを告白している。

 ハリス氏本人はもちろん、大使に対する侮辱は、国が侮辱されたのも同じこと。米国政府はこれをどのように捉えだろうか。

竹島問題のとばっちりで殺されそうにな

竹島問題のとばっちりで殺されそうにな

80針を縫う大けがをしたマーク・リッパート元駐韓大使 出典 United States Department of Defense [Public domain], via Wikimedia Commons

竹島問題のとばっちりで殺されそうにな

 また、駐韓米国大使といえば、2015年3月5日にマーク・リッパート駐韓大使襲撃事件も記憶に残る。

 ソウル市内で催された朝食会に出席したリッパート大使が、会場で韓国人の男に刃物で襲われ顔や腕を切られ重傷を負ったものだ。

 襲撃犯は、韓国政府から支援を受ける「ウリマダン独島守護」という団体に所属する人物。

 取り押さえられた時も「独島(竹島)は我が領土!」と叫んでいたという。竹島近海での米軍演習に抗議しての行動だったといわれる。

 また、彼が入院していた病院に犬肉を差し入れる人物がやってきた後日談が、日本や米国でも報道されている。

 韓国では犬肉を食べると傷の治りが早いという言い伝えがあり、善意からの行為のようだ。しかし、愛犬家の欧米人からすれば、これもタチの悪いいたずらとしか思えないだろう。

 さて、歴代の大使が散々な目にあわされてきたこの現実を見て、米国政府は駐韓大使にどのような人選をしてくるのだろうか。

 1年以上も駐韓大使不在という異常事態は、米国政府も何か考えるところがあってのことかもしれない。

 果たして大使が決まっても、韓国の人々が望む“格”のある人物が選ばれるかどうか…。

青山 誠(あおやま まこと)
日本や近隣アジアの近代・現代史が得意分野。著書に『浪花千栄子』(角川文庫)、『太平洋戦争の収支決算報告』(彩図社)、『江戸三〇〇藩城下町をゆく』(双葉社新書)、近著『日韓併合の収支決算報告~〝投資と回収〟から見た「植民地・朝鮮」~』(彩図社、2021年)。

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