北京五輪前日の遅すぎる注意

北京五輪前日の遅すぎる注意

アンドロイド版はいまだに確認できる

 情報が抜かれる仕様であることが判明している中国製アプリ「My2022」。

 日本政府が正式に注意を出したのは2月3日。スポーツ庁が公式見解を発表したのが2月8日だった。松野博一官房長長官が注意を促す発言をしたのは、なんと北京冬季五輪の開幕前日だった。遅すぎる。

 しかも、新型コロナウイルス対策同様にあくまで要請であり、各選手、関係者、マスコミ任せというあまりにも危機感に欠けるお粗末な対応と断言して良い。

 数量政策学者の高橋洋一氏は、自身のユーチューブチャンネルなどで取り上げるなど、識者が疑問の声を上げだして、ようやく重い腰を…という印象は拭えない。

「スパイウェア」ジェフリー・ケイン氏

「スパイウェア」ジェフリー・ケイン氏

My2022(冬奥通)

「スパイウェア」ジェフリー・ケイン氏

  My2022(冬奥通)は、北京五輪の参加選手、関係者、取材陣などバブル内に入る全員へ新型コロナ対策を理由にインストールを求めているアプリだ。事実上の義務状態。

 My2022は、英語版なら誰でもインストールできる。

 今回、中国アプリ検証用の端末へ入れてみた。

 My2022は、オリンピック関連情報、天候、競技日程、メッセージなどで構成されている。メッセンジャー機能はあるが、音声通話機能はないようだ。

 しかし、各機能をタップすると、大会身分証番号を求められるので、実際には使用できない。
 
 IT系ニュースが豊富なギガジンは、1月19日にカナダのセキュリティ研究者の分析結果として、情報の暗号化が回避できる点や2442個のNGワードリストが盛り込まれていることを伝えている。

 もっとも、中国のサーバーで管理される時点で、My2022のデータは、全コピーされて、監視されていることになる。

 また、先月、日本語版が発売された『AI監獄ウイグル』の著者ジェフリー・ケイン氏は、4日公開のインタビュー記事の中で、My2022を解析、検証した専門家の話としてスパイウェアであると断言している。

My2022だけでウイグルと同レベルの監視

 ジェフリー氏は、My2022はインストールしているだけで、通話内容は盗聴でき、中国政府が新疆ウイグル自治区で実施しているような監視と同レベルのことができるスマートフォンハッキングアプリだと話している。

 当然ながら、保存している電話帳、写真、ポイントアプリなどから購買・行動履歴、クレジットカード情報、ID、パスワード、サイト閲覧履歴などクッキーの情報までもその気になれば、指令1つで全部抜き取れるバックドアが仕掛けられていることになる。

 中国政府は、「中国人の命を守る」という誰も異を唱えられない大義名分で、コロナ禍に監視や統制、検閲を数段強化することに成功している。

 今回はそれを外国人、しかも、トップアスリートたちに新型コロナ対策を理由に強制してきたことになる。

 トップアスリートたちの情報は、中国政府からすれば、喉から手が出るほど欲しい宝の山だろう。

 中国は、My2022を健康観察のためとして、入国14日前からインストールすることを求めている。日本政府が注意を促した時には、とっくに情報が抜かれたあとだったのだ。

世界に誇る監視アプリWeChatの技術を全投入

世界に誇る監視アプリWeChatの技術を全投入

大会身分証番号が要求されるセキュリティの穴が指摘されてアップデートされた最新版2.0.8

世界に誇る監視アプリWeChatの技術を全投入

 そもそも、My2022の存在は、10月25日に北京冬季五輪組織委員会が発表している。27日には、中国国営CCTV傘下の「CGTN Japanese」がご丁寧に日本語で伝えている。

 このCGTN Japaneseは、ヤフーニュースに掲載される。

 しかし、中国政府が体制宣伝を目的としたプロパガンダ記事をわざわざ日本のポータルサイトへ載せる意味はどこにあるのだろうか。

 しかも、CGTNと英語の頭文字での略称なので、一見すると中国の国営メディアだとはわからないように細工していると受けられても仕方ない(サイト上に説明なし)。

 こんなの日本人にとって百害あって一利なしだと思うのだが…。

 少なくてもMy2022の脅威は、年内にはわかっていたはずだ。なぜ、日本政府は動かなかったのだろうか。

 世界1の監視アプリWeChat(ウィーチャット・微信)の現実を把握していないのだろうか。

 ここで培われた技術、スキルが惜しみもなくMy2022へ投入されていることは容易に想像がつくからだ。

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