文大統領から非常識な贈り物
文在寅(ムン・ジェイン)大統領が、旧正月に日本大使に送った贈り物の外箱には、竹島が描かれていた。
相星孝一大使は、受け取りを拒否し、「竹島は日本固有の領土」として強く抗議した。
文大統領が非常識な贈り物をした裏には、文政権の失政から国民の目をそらせようとする意図があるとみられる。
韓国では、旧正月に大統領夫妻名義で国家の功労者や各国の駐韓大使、マスコミ関係者に贈り物をするのが慣例になっている。
今年も旧正月(2月1日)を控え、文在寅大統領夫妻は、ギフトセットを国内の1万5000人あまりに送った。
今年は新型コロナウイルス対応で苦労している医療従事者も含まれているという。
セットの中身は、韓国の伝統酒であるムンベ酒、梅エキス、五味子エキス、蜜、栗など、韓国各地の特産物だが、問題になったのは、それらを入れた箱のデザインだ。
外箱には、こともあろうに韓国が不法占拠を続けている竹島(韓国名は独島)が描かれていたのである。
韓国メディア「日本の言いがかり」
日本の新聞報道によれば、今月21日、日本の相星孝一大使は、文大統領からの贈り物の受け取りを拒否するとともに「竹島は日本固有の領土だ」として韓国側に強く抗議したそうだ。
日本のマスコミ関係者もそれにならって、贈り物を送り返す動きが見られるという。
韓国の各メディアも日本の報道を引用する形で、旧正月の贈り物を日本大使およびマスコミが返送した事実を伝えた。
ハンギョレ新聞は24日の社説で、「独島に言いがかりをつけ文大統領の旧正月ギフトを返送した日本大使館」と書き、聯合ニュースは、「贈り物の箱には、島を背景に日が昇るデザインが描かれているが、日本大使館はこの島が独島を連想させると主張している」と報じた。
あたかも竹島でなない島を日本側が勝手に竹島だと言い張っているような書き方である。
竹島のデザインは意図的とみるのが自然
竹島のデザインは意図的とみるのが自然
しかし、箱に描かれた島は、形状が竹島そっくりであるだけではなく、右側の島には、韓国が不法に設置した「独島防衛隊施設」の特徴的な建物のシルエットがはっきりと描かれており、明らかに竹島を描いたものである。
青瓦台(韓国大統領府)は、韓国メディアの取材に対し「特別なコメントはない」と答えている。
今回の件が、青瓦台担当者のうっかりミスであるとは考えにくい。青瓦台がある意図を持って箱をデザインしたとみるほうが自然である。
では、その意図とは何だろうか。
李承晩が不法占拠した竹島は日韓最大の外交問題
竹島は、1905年に日本が島根県に編入して以来、国際法上も日本固有の領土であるが、戦後、1953年に韓国の李承晩(イ・スンマン)大統領がいわゆる「李承晩ライン」を一方的に設定して不法占拠をし、今も韓国が実効支配を続けている。
日本はことあるごとに「竹島は日本固有の領土である」旨を主張してきたが、その度に韓国は「妄言」として反発している。
竹島の領有権問題は、日本軍慰安婦問題、徴用工問題と並んで、日韓の間の最大の外交問題の1つなのである。
韓国では、国内で政府批判が高まると、国民の目をそらすために「反日」を利用してきた。竹島はその格好の手段であった。
2012年8月には政権末期の李明博(イ・ミョンバク)大統領が、現職大統領として初めて竹島に上陸し、日本側の激しい抗議を招くとともに韓国世論の反日意識をあおった。
今回の文大統領による「竹島利用」もその延長線上にある。
レームダックになった文在寅の伝家の宝刀「独島カード」
現在、文在寅大統領は、内政においても外交においても手詰まりの状態に陥り、典型的なレームダックの姿を見せている。
国内では、新型コロナのオミクロン株が急拡大し、感染者は過去最多を更新中である。一時は自慢の種だったK防疫は見る影もない。
都市部の不動産価格は高止まり状態で、庶民の怨嗟(えんさ)の声が高まっている。
外交面では、念願だった南北関係改善に失敗し、朝鮮戦争の終戦宣言のアイデアは、米国からも北朝鮮からも相手にされていない。
日韓関係に関しては、東京オリンピックで首脳会談を行って一気に打開しようとしたが、それも実現せず、もはや任期内での関係改善は不可能な状況である。
それならばといって取り出したのが、伝家の宝刀の「独島カード」なのであろう。
竹島をデザインした贈り物を送りつければ、当然ながら日本は反発する。そうなると今度は、国内の反日世論に火が付き、文大統領は自らの失政から国民の目をそらすことができる。
旧正月の贈り物は、残り少ない任期の中で、支持率下落を阻止するための文政権の最後の手段だったのではないだろうか。
犬鍋 浩(いぬなべ ひろし)
1961年東京生まれ。1996年~2007年、韓国ソウルに居住。帰国後も市井のコリアンウォッチャーとして自身のブログで発信を続けている。
犬鍋のヨロマル漫談