協同学習を取り入れるも成果がイマイチな韓国
小学校の授業では、少人数の班やグループに分かれて1つの課題に取り組む「協同学習」がよく行われる。
生徒たちが力を合わせて問題解決を目指すことで、他者の話を聞きその考えを理解する能力が養われる。そこから協調性やコミュニケーションのスキルも身につく。
多様性が求められる現代、日本をはじめ世界各国の学校カリキュラムに協同学習が取り入れられている。
韓国の教育現場でも、近年は協同学習が盛んに行われているようだ。
2018年に実施された国際学習達成調査(PISA)の中で、各国の生徒に「学校で協同学習などの生徒間協同を強調する」という質問をしたところ、韓国の回答率はOECD(経済協力開発機構)加盟国の平均よりも高かった。
しかし、熱心に協同学習をやっているわりには、その成果のほうが思わしくないという。これを心配する教育関係者も多いとか。
協同学習ではサボり癖ばかりが身につく!?
今年1月2日に韓国教育課程評価院から、PISAの上位圏にある韓国と日本、シンガポール、エストニア、フィンランドの5か国を比較分析した報告書が公表された。その翌日には、これを中央日報が記事にして問題を提起している。
協同学習によって学業達成の成果を上げている他の国々とは違って、この報告書では、韓国だけが「協同の雰囲気が学業達成度を低下させる」という結果が出ているとか。
また、記事には、教師による教育現場からのコメントも書かれていた。それによれば、協同学習では、個人の成果が集団の成績として合算されるために成績下位の者は、
「頭のいいヤツにまかせておけばいい」
と、作業に参加せずに楽をして成果だけを得ようとする傾向があるという。そのため学業成績はさらに落ちる。
一方、成績上位の者も自分の努力が正当に評価されないことに嫌気がさして、学習意欲を低下させる傾向が見られるのだと。
日韓関係改善のためにも学習の成果に期待
共同学習の成果が上がらないのは、韓国人の伝統的な気質にも要因があるのかもしれない。
魯迅の小説に「打落水犬」という言葉が出てくる。これを日本語にすると、
「水に落ちた犬は叩け」
と、いうこと。
犬が水からあがると元気を取り戻してかみついてくるかもしれない。だから、水に落ちている間に棒で叩いて溺れさせてしまえと…。それが、処世術を言い表す言葉として韓国内にも広まっている。
相手が弱っている時こそ勝利を得るチャンス。
と、何事に関しても競争心が強く負けず嫌いな韓国人気質。それが強く出すぎると、他人と共同で何かをやることは難しい。
どうやって相手の足を引っ張り出し抜いてやろうかと、そのことばかり考えてしまう。上手くいくはずもない。
しかし、協同学習によって「他者の考えを理解する」ことは、子供たちの将来には大いに役立つ。
特に昨今の日韓間にある様々な問題を解決するのには、最も必要な素養となってくる。日韓友好のためにも、教育の成果が上がることを望まずにはいられない。
青山 誠(あおやま まこと)
日本や近隣アジアの近代・現代史が得意分野。著書に『浪花千栄子』(角川文庫)、『太平洋戦争の収支決算報告』(彩図社)、『江戸三〇〇藩城下町をゆく』(双葉社新書)、近著『日韓併合の収支決算報告~〝投資と回収〟から見た「植民地・朝鮮」~』(彩図社、2021年)。