11月中朝貿易は前月と同水準
中国税関総署が12月中旬に発表した貿易統計によると、11月の中朝貿易総額は4126万9000ドル(約47億2000万円)であることがわかった。前月(10月)比1.2%減で、ほぼ同水準。
前々月の9月には、2021年1位となる6990万ドル(約79億6000万円)を記録していたが、10月、11月は2か月連続で減少傾向が続いた。
北朝鮮は2020年1月から新型コロナウイルス対策のため、厳格な国境管理を行なっており、現在も中朝貿易の完全再開の見込みは立っていない。
穀物輸入ゼロ
11月の貿易総額のうち、北朝鮮の対中輸入額は約3470万ドル(約39億7000万円)となり、前月(10月)比で約12.7%減となった。
前月の輸入品目でも上位(金額ベース)に入っていたゴム、プラスチック、医療用品がトップ3となり、これら3品目が輸入額の約半分を占めている。
食品項目では、大豆やマーガリン、酪農品などが上位に入ったが、穀物の輸入はなかった。
合金鉄が再び対中輸出1位に
一方、11月の対中輸出額は655万3000ドル(約7億5000万円)で、前月の約3倍増を記録。
だが、そもそも10月の対中輸出は200万ドル(約2億3000万円)で、高水準であった9月の1427万ドル(約16億3000万円)から約86%減と激減していた。
そのため、11月も決して高い水準ではなく、ようやく9月の水準の約半分まで回復したことになる。
輸出額回復に大きく寄与したのは、輸出品目1位となった鉄鋼(合金鉄)。
合金鉄だけで約370万ドル(約4億2000万円)と、11月の輸出全体の50%以上を占めている。
今年7月以降、合金鉄は対中輸出の主要品目となっていたが(7月は2位、8月、9月は1位)、10月に輸出が突然ゼロになっていた。
なぜ10月にいったんゼロとなったかは不明であるが、当面の間、合金鉄は対中輸出の柱となると考えられる。
そのほかの輸出品目では、美術品の輸出が拡大している。
2020年「苦難の行軍」以来のマイナス幅を記録
このように、中朝貿易はいまだ低水準を推移している。
北朝鮮の対中貿易依存度は約95%であることから、中朝貿易の低調は、北朝鮮経済に大きく影響を及ぼしている。
韓国統計庁は、12月23日に発表した「北朝鮮の主要統計指標」の中で、2020年の北朝鮮実質国内総生産(GDP)が前年比4.5%減とする推計を出した。
これは、大飢饉によって多数の餓死者が出た「苦難の行軍」の時期である1997年(6.5%減)に次ぐマイナス幅である。北朝鮮は2019年に0.4%のプラス成長を記録したが、2020年で再び成長率がマイナスに転じることとなった。
国連制裁や台風の自然災害、新型コロナによる国境封鎖などの3重苦により、住民生活にも大きな影響が出ているとみられる。
金正恩(キム・ジョンウン)総書記は、「自力更生」を基本にした経済政策を推進しているが、厳しい状況下で、今後どの程度の成果をあげられるかは不透明である。
八島 有佑
@yashiima