2020年のゴルフ場利用客は前年比11.9%増。ゴルフ用品市場も活気
新型コロナウイルスのパンデミックにより、現在の韓国では、5人以上で集まることが禁じられているが、ゴルフ場はその対象外。
しかも、広い屋外で楽しむゴルフは、感染の危険性が極めて少ないとあって、昨年あたりからゴルフ人口が急増しているという。
韓国ゴルフ場経営協会の調査では、2020年の年間ゴルフ場利用客数は前年比11.9%増。
また、ゴルフ人口は若者層にも広がり、20代の若者たちがスポーツ品店に殺到、ウェアやゴルフ用品の市場も活況を呈している。
その一番の売れ筋は日本製品だというのだから、さて、「NO JAPAN運動」はどこに行ってしまったのだろうか。
ゴルフ用品にも“戦犯企業”製品は多いけど…
2021年のマスターズで松山英樹が優勝したニュースは、韓国でも「アジア人選手初の快挙」として大きく報じられた。ゴルフブーム真っ盛りの状況だけに、注目度は、むしろ日本よりも高かったとも言われる。
松山が使用していたウェアやゴルフ用品にも注目が集まる。
最近は、同じもの買い求める人も多くなり、アシックスのシューズだとか、スリクソンの松山英樹モデルのウェアなどが飛ぶように売れているという。
それらは、すべて日本に本社があるメーカーだ。
たとえば、スリクソンは、住友ゴム工業がスポーツ用品に特化して立ち上げたブランドである。
2012年に韓国政府が作成した日本植民地時代に朝鮮人労働者を強制徴用して働かせた“戦犯企業”273社のリストには、住友ゴム工業の名も載っている。
住友と言えば、三菱や三井とともに戦前の4大財閥。徴用工裁判では、被告になっている関連企業もある。
また、韓国関税庁によれば、今年1月~10月までのゴルフ用品輸入額は、昨年同期間よりも29.3%も増えており、その46.5%が日本からの輸入で占められていたという。
韓国の左翼系の新聞では、日本製ゴルフ用品の売上急増に苦言を呈する記事も見られるが、国を挙げての不買運動にはならず。売れ行きは堅調なようだ。
ゴルフそのものが“日帝の残滓”なのでは!?
しかし、ゴルフ用品やウェアのようにブームで恩恵を受けた産業もあれば、それによって被害を被った産業もある。
日本の自動車産業はNO JAPAN運動では、特にその標的とされてきた。
その騒ぎも収まってほっとしているこの時期に、全羅北道にあるゴルフ場が公式サイトで「2022年1月からゴルフ場に日本製の車両の出入りをすべて禁止する」と発表。大きな反響を呼んで追従しようというゴルフ場も出てきている。
しかし、それを喜んで支持いるのは、ゴルフに行くような金の余裕のない層で、レクサスなど日本製高級車に乗るゴルフ場のお得意様は、迷惑顔だという話も聞かれるのだが、それはさておき、ここで少し考えてみたい。
「そもそも誰が韓国にゴルフを導入したのか?」
ソウル郊外に韓国初の本格ゴルフ場である孝昌園コースが作られたのは、日本植民地時代の1921年。
日本人主導のもと、日本資本によってゴルフは韓国の地に根付いたのである。つまり、ゴルフそのものが“日帝の残滓(ざんし)”ということになる。
日本製のゴルフ用品やゴルフ場への日本車乗り入れに目くじら立てるのなら、ゴルフそのものを禁止するべきかと…。
青山 誠(あおやま まこと)
日本や近隣アジアの近代・現代史が得意分野。著書に『浪花千栄子』(角川文庫)、『太平洋戦争の収支決算報告』(彩図社)、『江戸三〇〇藩城下町をゆく』(双葉社新書)、近著『日韓併合の収支決算報告~〝投資と回収〟から見た「植民地・朝鮮」~』(彩図社、2021年)。