帰国子女が活躍できる仕組み
BTSが40代日本人男性の心をもつかむ ベトナムでハマった理由の続き。
K-POPがすごい1つの大きな理由は、演者のスキル、言語だけでなく、ダンスや演技などのパフォーマンスが世界レベルにあるということが大きいという。
「ブラックピンクも純粋な韓国育ちのメンバーは1人だけだけでしょう?英語圏に移民した家族の子供たちが、本国できちんとデビューできる仕組みがちゃんとあるというのは、韓国エンタメ業界の大きなアドバンテージ」
女性グループでは、K-POP随一の「ブラックピンク」もメンバー4人のうち1人はタイ人で、2人は少なくとも子供時代を海外で過ごしている。それでも韓国に戻り、活躍できる場がある。
日本の帰国子女の世界だと、就学・就業先には言語の部分で不利になったり、海外経験というスキルに見合った扱いがされないケースは実際少なくない。
「BTSにしろ、ブラックピンクにしろ、欧米人のプロデュースや大物ミュージシャンとのコラボも頻繁で、パフォーマンスそのもののレベルが、日本のエンタメとは違いすぎる。日本の同年代のアイドルが束になってかかっても足元にも及ばない」
ベトナムネトフリのドラマ部門トップ10中7作品を韓国作品が占める
ベトナムネトフリのドラマ部門トップ10中7作品を韓国作品が占める
ベトナムの厳しいコロナ対策も手伝って、以前はまったく韓国エンターテイメントへ注目していなかったというY氏は、韓国エンタメにより魅了されていく。K-POPだけでなく、ドラマなども見始めた。
「日本と韓国を比較すると、国としての勢いの違いも出てきている。そんな中で韓国ドラマや映画も勢いあるね。今は『賢い医師生活』『イカゲーム』『刑務所のルールブック』を見ている」
2000年代前半、東南アジアのテレビでは、アジアエンターテインメントと言えば日本のポップスやドラマ、映画だった。
それが今では、韓国に押されているどころか、ほとんど目にしないレベルだ。映画やドラマのサブスクで人気のネットフリックスもドラマ部門のトップ10では1位を含め、7つもの韓国作品がランクインしている(取材時)。
「それでもネトフリで、日本のドラマがかなり見られるようになったけどね。日本のテレビ局もようやく動き出したのかな。日本国内だけで消費してもジリ貧なのでしょう」
韓国エンターテインメントの真骨頂は売り方にあり?
90年代後半には、すでに韓国アイドルが日本進出を始めていた。当時は日本では人気を獲得できない歌手やグループもあったが、韓国芸能界が日本進出を続けたのは、韓国国内では、もうからないからだ。
当時からK-POP業界は、デビュー前のトレーニングに金をかける傾向にあり、韓国で売れてもペイできない。そこで、デビュー前から海外市場を目標にマネージメントされてきた。
それが実を結んだのが今であり、一方で、20年以上も前に韓国がやっていたことを、今になって日本のエンタメ業界がやろうとしている。
何事にも先人にうまみがあるビジネスにおいて、日本のエンタメは、韓国エンタメを追い越すのは、非常に困難かもしれない。
高田 胤臣(たかだ たねおみ)
タイ在住ライター。2002年から現在にいたるまでバンコクで過ごしている。『バンコクアソビ』(イースト・プレス・2018年)、『バンコク 裏の歩き方【2019-20年度版】』(彩図社、2019年・皿井タレー共書)、『ベトナム裏の歩き方』(彩図社、2019年)など、近著『亜細亜熱帯怪談』(晶文社、2019年・監修丸山ゴンザレス)。
@NatureNENEAM
在住歴20年が話したい本当のタイと見てきたこととうまい話と(note)