「本当にできるの?」韓国内からも疑問の声
国連気候変動枠組み条約第26回締約国際会議(COP26)で採択された「グローバル脱炭素声明」には、韓国政府も公式署名している。
この声明では、温室効果ガスの排出削減対策がとられていない石炭火力発電所の新規建設を中止するほか、主要経済国は、2030年代に石炭火力発電からの転換を図るための技術や政策を拡大することになっているのだが、
「本当にそれができるのか?」
外国の専門家だけではなく、韓国内でもその達成を疑問視する声は多いという。
石炭火力への依存度は日本より高いのだが…
日本は「多様なエネルギー源をバランスよく活用することが重要だ」として、米国や中国とともにグローバル脱炭素声明に署名しなかった。
資源小国の日本にとって石炭は、地政学的リスクの少ない貴重なエネルギー源。再生エネルギーや天然ガスに比べてコストも安い。
署名を拒んだことで、温暖化対策に後ろ向きの国だとして「化石賞」を贈られる不名誉なことになってしまったが、それでもこのメリットは捨てられない。
また、日本の総発電量の32%は石炭火力で占められる。声明を主導した英国は2%、フランスに至っては1%と、石炭火力発電の依存度は桁違い。条件が違い過ぎるのだ。
その欧州の国々に追従して署名した韓国は、石炭火力発電の割合が総発電量の約40%。
実は日本よりも依存度が高く、石炭の使用量も世界第5位。この数字を見ると確かに「大丈夫なのか?」と、達成を危ぶんでしまう。
韓国政府では、2030年までに温室効果ガスの排出量を24.4%削減する目標を掲げ、2025年までに11兆3000ウォン(約1兆622億円)を太陽光や風力など再生エネルギーの開発に投資するなど積極的な対策に乗り出してはいるのだが。
それでも「声明の履行は、かなり難しいのではないか?」という声が多く聞かれる。
「約束」という言葉の意味が他国とは違う!?
実は、グローバル脱炭素声明に調印した韓国政府もまた、その達成は、難しいと思っているようだ。
11月6日の中央日報日本語版に、韓国政府関係者のコメントが載せられているのだが、それによると、声明への参加は、「必ず2030年代までに石炭発電を転換するという意味ではないと理解している」と、つまり努力目標程度にしか考えていない。
また、韓国の産業通商資源省も「脱炭素の期限に同意したものではない」と否定、外交省でも「産業資源省がこれを支持するはずがない」と返答している。
声明に署名はしたが、その責任を果たす気がまったくなさそう。「無理でした」で済ませることができるなら、署名だけして批判をかわすのが得策だろう。
けど、国際的な約束事を軽く考え過ぎてはいないか。
他の国々の認識は違う。日本や米国は、それが不可能だと判断したから批判を覚悟で署名しなかったのだが…。
日韓請求権協定や慰安婦合意など、日本との約束事を平気で反故(ほご)にできたのも、この態度を見ているとうなずける。
各国で使われる「約束」という言葉は、韓国語に翻訳すると「努力目標」あるいは「その場逃れ」なのかもしれない。
青山 誠(あおやま まこと)
日本や近隣アジアの近代・現代史が得意分野。著書に『浪花千栄子』(角川文庫)、『太平洋戦争の収支決算報告』(彩図社)、『江戸三〇〇藩城下町をゆく』(双葉社新書)、近著『日韓併合の収支決算報告~〝投資と回収〟から見た「植民地・朝鮮」~』(彩図社、2021年)。