過去最高の感染者数にオミクロン株が追い討ち

過去最高の感染者数にオミクロン株が追い討ち

文在寅大統領は1日でも早く新型コロナを収束させて南北首脳会談を実現させたい(提供 コリアメディア)

 12月1日、韓国の新型コロナウイルス感染者数は、初めて5000人を越え、翌日には5266人と過去最多を更新した。それに追い討ちをかけるかのように、新変異株のオミクロン株が確認され、国民に衝撃を与えている。

 この渦中に文在寅(ムン・ジェイン)大統領はカトリックの行事に参加し、新型コロナを乗り越えるために神に祈った。

 聯合ニュースなど韓国メディアの報道によれば、韓国で初めてオミクロン株感染が確認されたのは、11月24日にナイジェリアから帰国した仁川在住の牧師夫妻である。

 この時期にナイジェリアに行ったこと自体、無謀に思えるが、教会の活動のためだったのだろうか。

牧師夫妻の嘘により感染拡大の恐れ

 牧師夫妻は当初、空港から帰宅する際、防疫仕様のタクシーを利用したと言っていたが、実はこれは嘘だった。実際は、知人の運転する車で帰ったことがわかった。

 この知人はウズベキスタン国籍で、その後の検査の結果、オミクロン株感染が判明した。

 牧師夫妻は25日に新型コロナ陽性がわかり、自宅隔離をしていた。夫妻が陽性であることを知った知人は、PCR検査を受けたが陰性だった。

 しかし、その後、発熱があり、再度検査を受けたところ陽性と診断。それまでの6日間、隔離されることなく自由に行動し、近所の歯科医院、スーパーマーケット、食堂などに立ち寄ったという。この間の接触者は、50人ほどと推定されている。

 さらに、濃厚接触者とされる知人の家族は、教会主催のプログラムと礼拝に参加しており、合わせて800人以上に接触した可能性があるとのことで、近隣住民に不安が広がっている。

 牧師夫婦が住む仁川市ミチュホル区は、嘘をついていた牧師夫婦を感染病予防・管理に関する法律に違反した嫌疑で告発することを検討しているという。

宗教施設で頻発するクラスター

宗教施設で頻発するクラスター

閉鎖された新天地イエス教会(2020年3月2日) 出典 Namoroka [Public domain], via Wikimedia Commons

 韓国では、これまでも教会など宗教施設で、しばしば新型コロナウイルスのクラスターが発生している。

 新型コロナが広がり始めた2020年2月には、大邱のキリスト教系新興宗教団体「新天地イエス教会」で5000人以上の大規模クラスターが発生した。

 教団側は、信徒の情報を公開せず、接触者の追跡を妨げたとして告発された。この教会では、大勢の信者が床に座り、体を密着させて礼拝、説教者の言葉に対し大声で「アーメン」を唱えるという独特の礼拝方法をとっており、それが感染拡大につながったと指摘されている。

 最近では11月、ソウル南部天安市の宗教施設で起こったクラスターが記憶に新しい。

 この施設では、多くの信者が集団生活をしており、241人の感染が確認されている。信者の90%以上がワクチンを接種していなかったことが、クラスターの原因の1つと言われる。

 これ以外に一般的な教会でも小規模なクラスターが頻発していた。新天地イエス教会の場合、教団側が調査に非協力的だったことから世論の強い非難を浴びた。

 しかし、不思議なのは、一般の教会に対する非難の声があまり上がらないことだ。

 これは、韓国にキリスト教信者が多いことと関係があるだろう。

韓国はキリスト教国?

 韓国統計庁のデータによると、韓国の2015年の宗教人口は、仏教が15.5%、キリスト教(プロテスタント)が19.7%、キリスト教(カトリック)が7.9%で、プロテスタントとカトリックを合わせたクリスチャンの人口比は、仏教の2倍近い。

 日本のクリスチャンが2%以下であることを考えると、韓国はキリスト教国と言ってもいいほどだ。

 歴代大統領にもクリスチャンが多く、文大統領もカトリック信者であることが知られている。

新型コロナに追い詰められた文大統領、あとは…

 文大統領は、新型コロナの感染爆発で医療が逼迫(ひっぱく)しているさなか、12月2日、カトリック団体が主催する「国家朝餐祈祷会」に参加し、あいさつした。

 その中で、批判が高まっているこれまでの防疫施策やウィズコロナへの移行措置について、自らの非を認めることはなかった。

 文大統領は、「国民の心配と不安を和らげ、よりよい日常に跳躍できるよう最善を尽くす」「日常回復(ウィズコロナ)への最後の峠を乗り越えていく大韓民国のために、心を1つにして、祈祷していただきたい」と締めくくった。

 手の施しようのないレベルに達している新型コロナを終息させるためには、もはや「神に祈るしかない」ということなのかもしれない。

犬鍋 浩(いぬなべ ひろし)
1961年東京生まれ。1996年~2007年、韓国ソウルに居住。帰国後も市井のコリアンウォッチャーとして自身のブログで発信を続けている。
犬鍋のヨロマル漫談

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