前月から40%減も今年2位の水準

前月から40%減も今年2位の水準

中朝貿易総額の月別推移(中国税関総署の公表資料より筆者作成)

 中国税関総署が発表した貿易統計によると、10月の中朝貿易総額は4178万ドル(約47億9000万円)であることがわかった。

 2021年最高額となった前月(9月)の6990万ドル(約79億6000万円)と比べて、40%減となった。

 前月の水準が高かった分、大幅に貿易額が減少したように見えるが、2021年の月別貿易総額では2位である。

 ただ、今年5月以降は中朝貿易が回復傾向にあった中で、前月の水準を下回るのは半年ぶりである。

 今回が一時的な減少なのか、11月および12月の貿易動向を見極める必要がある。

前月上位の食用油や石油アスファルトの輸入激減

 10月の中国からの輸入総額は3978万ドル(約45億6000万円)で、前月(9月)の5563万ドル(約63億3000万円)から約30%減となっている。

 輸入品目のうち、金額ベースで最も多かったのはゴム類で、700万ドル(約8億円)で1位となった。

 2位以降は、前月も上位であったプラスチック(前月3位)、たばこ(同1位)、石けん等(同8位)、医療用品(同4位)が続く。

 その一方で、前月上位であった食用油(同2位)や石油アスファルト(同7位)が激減した。

 北朝鮮は9月に石油アスファルトを4500トン以上輸入しており、住宅建設事業に充てられた可能性がある。そうであれば、事業計画に必要な量が用意できたため、10月は輸入しなかったものと考えられる。

ビールが輸出3位に

 10月の北朝鮮の対中輸出額は200万ドル(約2億3000万円)で、前月(9月)の1427万ドル(約16億3000万円)から約86%減となった。

 輸出品目1位は電力で、前月の上位品目であった鉄鋼(合金鉄、前月1位)や時計(同2位)などの輸出がなくなっている。

 その一方で、アルコール飲料(ビール)の輸出が2万7000ドル(約300万円)で、3位に入った。

 今年7月にもビールが対中輸出の上位品目となったが、このときは3万9000ドル(約445万円)であった。

 北朝鮮のビールと言えば、大同江ビールが有名。中国税関総署の統計資料などによると、コロナ禍前までは、月平均4万リットル(500ミリリットル換算で8万本)を超える大同江ビールを中国に輸出していた。

国境封鎖解除や陸路貿易再開の見通し立たず

 韓国統一省の李種珠(イ・ジョンジュ)報道官は、11月22日の会見で、中朝国境における封鎖解除に向けた準備動向が「継続的に確認できている」としつつも、現状では、「国境封鎖が解除される段階にはない」と述べた。

 韓国の国家情報院は10月末に、「11月に中朝間の列車運行が再開される可能性がある」と説明したが、いまだ発表はない。

 ある中朝貿易関係者は、「(中朝間で運行する)貨物列車の点検作業が定期的に行われているようだが、陸路貿易再開がいつになるか見通しが立っていない」と話す。

 中国側の新型コロナウイルス感染状況が落ち着かない中では、このまま中朝貿易の停滞状況が続くとみられる。

八島 有佑
@yashiima

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