感染がピークアウトしたタイ。接種完了率40%到達
11月から条件付きで強制隔離免除して外国人入国を受け入れ始めるタイ。タイ国内感染者数は、タイ新型コロナウイルス感染症対策センターの報告によれば計8452人、死者は57人となっている(10月27日の1日の人数)。累計感染者数は187万5315人、累計死者数は1万8922人だ。
ワクチンの累計接種回数は、同月26日までで7204万9529回。これは人口の56.5%が少なくとも1回、40.4%が2回、3.1%が3回の接種を受けたことになる。
一時期は、1日の感染者数が2万人を超えるなど危険な状況にあったが、それよりはやや落ち着き始めてはいる。
日本人入国者200か国中3位
タイはビジネス訪問など、観光目的以外の入国は2020年の半ばにすでに始まっていて、タイに製造拠点などがある日系企業の社員や、タイでビジネスを持つ人々の往来は少なからずあった。タイ入国管理局が発表している2021年10月のアジア諸国の入国者数は下記のようになっている(ただし、統計者数は10月下旬までの数値とみられる)。
・マレーシア:7495人(全体の1位)
・フィリピン:3444人(同2位)
・日本:3298人(同3位)
・中国:2894人(同4位)
・韓国:1005人(同11位)
・インドネシア:983人(同13位)
・ミャンマー:928人(同14位)
・ベトナム:826人(同15位)
・シンガポール:476人(同20位)
・台湾:342人(同27位)
・カンボジア:163人(同38位)
・ラオス:100人(同47位)
タイは200か国超の国々から入国者があり、10月の全体数は9万9078人。タイ入管の統計フォーマットは随時変更されているため、物流関係者の一時的入国などの人数は今回の統計からは読み取れない。
韓国人入国者数は相変わらず伸び悩み
いずれにしてもコロナ禍以前の通常時の統計とは大きな変化が見られる。日本はタイとは友好関係が良好であり、かつビジネス的なつながりも強固。さらに観光先としても人気で、毎年100万人以上の日本人が訪れ、統計上でも常に上位だった。
一方で、韓国は観光ビザの優遇が日本のパスポートよりも有利で、毎年日本人よりも多くの入国者数があった。しかし、観光渡航ができなくなった今、タイ国籍者を抜いた入国者全体のうち国籍別では11番目にまで落ち込んでいる。
タイもスマートフォンや家電各種で韓国ブランドが人気で工場などがあるものの、同じ東南アジアのベトナムの方が韓国企業進出が顕著で、その上ベトナム政府も韓国人技師の出入国を特別枠で許可するなど優遇していたため、タイ入国韓国人はベトナム入国韓国人の数ほど伸びていない。
相手国のコロナ対策との相関関係も
同時にこれらの入国者数は、相手国のコロナウイルスの施策や政情なども強く関係しているとみられる。たとえば、タイ国内で肉体労働や家政婦、飲食店店員などで重宝されているミャンマー人、カンボジア人、ラオス人の入国も激減中だ。ミャンマーはクーデターで混乱中であるし、カンボジアとラオスは、日本ではあまり話題にならないが、コロナ対策がわりと強硬で、出入国もままならない。タイ国内の彼らに向けた仕事が激減しているだけでなく、タイには入れてもいつ故郷に戻れるかわからない不安もタイ入国者数を減らしている要因の1つとみられる。
観光収入も大きいタイは、バンコクでさえ外国人向けの飲食店やホテル、観光スポットは大打撃を受け、外国人経営の場合は、撤退しているところも少なくない。
11月に実質的受け入れ再開をするタイだが、観光客が行ける場所がまだ少ないこと、タイ政府の施策は急に変更されること、そもそもタイ国内のタイ人や在住外国人が受け入れ再開による感染拡大を不安視していることなど、課題は山積みである。
高田 胤臣(たかだ たねおみ)
タイ在住ライター。2002年から現在にいたるまでバンコクで過ごしている。『バンコクアソビ』(イースト・プレス・2018年)、『バンコク 裏の歩き方【2019-20年度版】』(彩図社、2019年・皿井タレー共書)、『ベトナム裏の歩き方』(彩図社、2019年)など、近著『亜細亜熱帯怪談』(晶文社、2019年・監修丸山ゴンザレス)。
@NatureNENEAM
在住歴20年が話したい本当のタイと見てきたこととうまい話と(note)