日本のゲームやアニメコスプレ写真で飾る卒アル
9月11日に配信された「現代ビジネス」に興味深い記事があった。韓国の高校でも卒業アルバムの制作が毎年の恒例行事になっている。最近は、日本のアニメやゲームのキャラクターを真似たコスプレ写真が載せた卒業アルバムが目立つようになり、「親日卒業アルバム」などと呼んで問題視する声があるという。
日本でも卒業アルバムの写真には、時々の流行や社会現象などが反映される。今年は韓国でも「鬼滅の刃」が大ヒットしており、若者たちが、それに影響されるのも当然…、なのだが、それが日本に関係するものであれば、不用意に写真を載せたりすると叩かれるというお国柄。特に文在寅(ムン・ジェイン)政権になってからは、その傾向が強まっている。
韓国の若者たちは日本好きが多い!?
「NO JAPAN」運動が盛んだった頃は、SNSに日本旅行や日本製品の写真を載せると、たちまち炎上騒ぎになったりもした。まるで魔女狩りのような状況に日本アニメのファンは戦々恐々。趣味について人前で語らず、自分を押し殺して生きる忍従の日々なのだとか。
しかし、高校生たちは、自分が好むものに素直な反応を見せる。そんな恐れを知らぬ行動が、大人たちにとっては驚きだったのだろう。
韓国で日本の印象についての意識調査をすれば、年齢が若くなるに従って「日本が好き」と回答する人の数が増える。日本でも同様の意識調査はよく行われ、韓国と似たような傾向を示している。たとえば、朝日新聞が2019年に実施した全国世論調査では、30代までは韓国を「好き」と答える人よりも「嫌い」と答える人が多かったのだが、29歳以下では好きは23%で嫌いの13%を逆転していた。
韓国の若者たちが、日本のアニメに熱中するように、日本の若者たちの間でK-POPは、もはやブームというよりも1つの音楽ジャンルとして人気が定着している。
日本的表現に「放送不適合」と判定
若者にはアニメや音楽のほうが身近で関心も高い。日韓の大人世代が、喧々諤々でやりあう政治問題や歴史問題など、それと比べたらどうでもいい話なのだろう。彼らが社会の中心になるような時代が来れば、両国の関係もかなりマシになるような気もするのだが。
考えてみれば、韓国の映画や音楽の放送が解禁されたのは1999年からのこと。それ以前は、日本の大衆文化流入を厳しく規制していた。アンケート調査で、日本を嫌いと回答する者が多いのは、若い頃に日本文化に触れることのなかった年齢層である。
このまま文化的交流を続けて、相手をより知ってゆけば嫌悪感は払拭される。日韓の未来は明るい…、はずなのだが。しかし、近年になってからは、それに歯止めをかけようという動きもある。2014年にK-POPのガールズグループの歌詞に「日本的な表現がある」として、KBS(韓国放送公社)が放送不適合とした。
あまり仲良くなられては困る。そういうことか。
青山 誠(あおやま まこと)
日本や近隣アジアの近代・現代史が得意分野。著書に『浪花千栄子』(角川文庫)、『太平洋戦争の収支決算報告』(彩図社)、『江戸三〇〇藩城下町をゆく』(双葉社新書)、近著『日韓併合の収支決算報告~〝投資と回収〟から見た「植民地・朝鮮」~』(彩図社、2021年)。